著者
小川 寿美子 等々力 英美 有泉 誠 吉田 朝啓 糸数 公 鄭 奎城 崎原 盛造
出版者
琉球大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は過去3年間の研究成果として、論文9本、学会発表17演題、図書3冊、視聴覚教材ビデオ8本、データベース(CD)8枚が産出された。特に最終年度には以下のような具体的な研究実績の収束に努めた。(1)第2回ケース・メソッド研修の実施(平成14年6月30日) 昨年度の第1回同研修に引き続き問題解決型開発教育モデル制作の研修を実施した。受講者は本研究協力者で、この研修後、6本のケース教材が完成した。同教材は、(5)のビデオ教材のジャケットに納める小冊子に添付され、国際協力用の教材として広く活用されている。(2)保健人材班ワークショップ開催(平成14年7月6/7日) 過去3年間でまとめた沖縄の保健人材に関する量的データを用い、システムダイナミックス・シミュレーションモデル策定のワークショップを開催した。結果は(7)で発表した。(3)国際協力への実用化-途上国の保健医療人に対する研修への応用(平成14年4月15/16日,平成15年1月17.23-25日) JICA(国際協力事業団)の研修へと多岐にわたり応用された。4月は九州・久留米市の聖マリア病院での地域保健指導者研修コースで、1月には沖縄国際センターでの島嶼保健医療政策研修コースにて、本研究にて作成された視聴覚教材とケース教材を用いた授業が展開され、受講生(途上国の医師・看護師・助産師)から好評を得た。(4)論文、学会発表、図書 今年度は本研究に関する論文が8本、学会抄録は8本、図書は1冊が産出された。これらは、初年度からの業績も含め、広く世界の研究者と共有すべく、英語に翻訳して、報告書並びに本研究のwebページで情報を開示する作業を進めている。(同年5月末完成予定)(5)視聴覚教材の制作 前年度の2本のビデオ制作に引き続き、今年度は6本のビデオを制作。ビデオ検討会議(各6本分のビデオに関する内容検討会議を、年3回、各6本分のビデオ開催)を経て、平成15年1月に日本語版と英語版が完成。JICA研修((3))をはじめ、日本や諸外国の大学・研究機関にて活用されつつある。(6)データベース(CD) 米国民政府の公衆衛生関連資料をまとめたDB、沖縄県復帰前の保健医療関連新聞記事をまとめたDB、昭和35年から現在までの衛生統計データをまとめたDB、今まで制作した計8本分のビデオ教材をパワーポイント化したDB、の計4種のCDに関して本科研費を用いて作成した。(7)国際シンポジウムの開催(平成15年1月24-26日) 過去3年間の集大成として、国際シンポジウム「沖縄における保健医療人材確保の経験から〜過去50年の検証」を開催。内外からシンポジストを迎え、ビデオ会議、同時通訳付で活発なる意見交換が行われた。同シンポジウムの本番記録は、本研究Webページで公開されている。また、現在、CDにまとめる作集を行っている。(8)最終報告書(英語版)の作成 計418ページにわたる報告書を英語版で作成し、3年間の研究・実践の成果を広く世界の研究教育機関にアピールする。
著者
小川 寿美子
出版者
名桜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は研究の最終年度であったため集大成の結果を国際学会(21st Pacific Science Congress)にて合計四演題を口頭発表をした。第一の発表は、本研究課題のタイトルにもある「沖縄女性のエンパワメント」に関する考察結果の集大成である「Empowerment of Public Health Nurses in Post-WorldWar II Okinawa(第二次世界大戦後沖縄における公衆衛生看護婦のエンパワメントに関する研究)」という演題であった。第二の発表は、戦後沖縄の離島・僻地の地域保健・医療を支えた公衆衛生看護婦(現・保健師)や介輔(医師不足を解消するため戦時中、衛生兵の経験のある者などに離島や僻地など地域限定で一定の診療行為が認められた人)に焦点を当てた「Mid-Level Practitioners for CommunityHealth Services:Lesson-Learned from Post-War Okinawa(実践医療職による地域保健サービス-戦後沖縄の経験から学べる点)」という演題であった。第三の発表は、沖縄の僻地の中でも、特に沖縄北部地域に限定し、1960年代の母子保健事情をまとめたもので「Maternal Health Workforce in Northern Okinawa in the 1960's(1960年代の沖縄北部における母子保健従事者に関する研究:本報告者は共著者の一人)」という演題であった。第四の発表は、現代の沖縄女性でも、特に女性医師に焦点を当てた研究で、離島・僻地で働く医師が未だに不足する原因を、インタビューやアンケート票を用いてまとめた「Women Doctors and the Chronic Doctor Shortage in Remote Areas of Okinawa(沖縄離島・僻地における慢性的な医師不足と女性医師に関する研究)である。本研究を通じて明らかとなったこと、および以上の国際学会での発表の諸結論をまとめると、女性がエンパワメントを受ける強い要因として (1)男性との力関係を競わない条件(戦後沖縄の男性人口の減少)、 (2)職能集団意識(公衆衛生看護婦)、 (3)組織的な活動と後方支援との信頼関係(同上)、 (4)カリスマ的存在への憧憬と尊敬の念(米国民政府のワーターワース、公衆衛生看護の要、金城妙子女史)が条件であったという結論に達した。