著者
小川 真弘
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性は男性よりも骨格筋量が少ないことから、基礎代謝量が低く、また高齢期での転倒リスクが高い。男女間の性差を引き起こす要因として性ホルモンが挙げられるが、女性ホルモン(エストロゲン)の骨格筋における役割は不明である。ERには2つのアイソフォームERαとERβが存在し、互いに拮抗的に作用する。しかしながら、骨格筋におけるこれら2つのERの役割も不明である。前年度ではメスマウスではERαが脱ユビキチン化酵素であるUSP19の発現が亢進しており、その結果として骨格筋量が負に制御されることを示した。そこで、本年度ではエストロゲンシグナル及びUSP19の骨格筋量に対する影響に世代差があるのかを検証することを目的として行った。まず、メスマウスの骨格筋に対するUSP19の世代差の影響を検証した。若齢、中年齢及び高齢のメスマウスの骨格筋のUSP19あるいはERαの発現をsiRNAによりノックダウンさせた。その結果、若齢のメスマウスのヒラメ筋の重量が増加するが、中年齢及び高齢のメスマウスの骨格筋には影響がなかった。また若齢メスマウスのみで骨格筋のERαをノックダウンすることによって、骨格筋でのUSP19の発現量が減少して、筋量が増加した。続いて、骨格筋量の調節におけるERβアゴニストであるダイゼインとERβの影響における世代差について、エストロゲンを除去した卵巣摘出(OVX)マウスを用いて評価した。若齢のOVXマウスではダイゼイン摂取は筋量を増加させ、さらにE2による筋重量減少を抑制したが、中年齢及び高齢のメスマウスでは骨格筋量に対するダイゼイン摂取の影響は見られなかった。以上の結果から、若齢のメスマウスのみでERβを活性化することによって、骨格筋重量を増加させることがわかり、ERβアゴニストの骨格筋に対する影響には世代差があることが判明した。