著者
小川 竜平 真鍋 厚史 中山 貞男 小口 勝司
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.118-127, 1994-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

カルシウム (Ca) とリン (P) の吸収, 排泄ならびに実験的骨粗鬆症の骨代謝に対するシュウ酸 (OA) , 酒石酸 (TA) の影響をWistar系雌性ラットを用いて検討した.1または3%のOAあるいはTAを含む飲料水を1~3週間自由に摂取させCa, Pの糞中, 尿中排泄量を測定した.OAおよびTAともCaの糞中排泄をいずれの摂取期間においても明らかに増加させた.Pの糞中排泄もOAおよびTA摂取により増加あるいは増加傾向を示した.一方, CaおよびPの尿中排泄には明らかな変化は認められなかった.すなわちOAおよびTAはCa, Pの腸管からの吸収阻害により糞中排泄を増加させたと考えられる.卵巣摘出 (OVX) による実験的骨粗鬆症に対する影響は, 1%OA (OVX・OA) , 1%TA (OVX・TA) を6カ月間自由摂取させ検討した.大腿骨と脛骨の灰分重量と乾燥重量の比は灰分重量の減少によってShamに比較しOVX, OVX・OA, OVX・TAにおいても低下したが, 3群問に差は認められなかった.大腿骨, 脛骨のCaはOVXで減少を示し, OVX・OAとOVX・TAではこの減少が著明に促進された.骨中PはOVXで有意な減少を示さなかったが, OVX・OAとOVX・TAではSham, OVXに比べて減少を示した.組織学的にはOVX・OA, OVX・TAで脛骨骨幹端部の骨梁の減少および単位骨量の減少を認めた.以上の結果より, OAとTAは腸管からのCaとPの吸収を阻害し骨粗鬆症を悪化させる可能性が示唆された.