著者
齊川 真聰 小口 勝司 中山 貞男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.360-369, 2006-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療に臨床的に使用されている漢方薬 (黄連解毒湯: OGT, 温清飲: USI, 十全大補湯: JTT, 当帰飲子: TI, 荊芥連翹湯: KRT, 四物湯: SMT) の塩化ピクリル (PC) およびオキサゾロン (Oxa) で誘発した遅延型過敏性皮膚炎 (DTH) の急性ならびに慢性皮膚病変に対する影響を検討した.PCを感作・誘発物質とした急性皮膚炎はBALB/c系雌マウスを用い, PC感作7日後に1回チャレンジで誘発した.Oxaを感作・誘発物質とした急性皮膚炎はBDF1系雌マウスを用い, Oxa感作後7日後に1回のチャレンジで誘発した.Oxa誘発慢性皮膚炎はOxa感作7日後から7日ごとに4回のチャレンジを行い誘発した.6種類の漢方薬はPC誘発耳介腫脹を抑制したが, OGT, USI, JTT, TIの抑制は用量依存的作用ではなかった.KRT, SMTは用量依存的抑制作用を示した.Oxa誘発耳介腫脹に対しても6種類の漢方薬は抑制作用を示したが, 用量依存性は認められなかった.Oxa4回チャレンジによる耳介腫脹に対してはOGT, USI, JTT, KRT4種類の漢方薬の作用を検討した.4種漢方薬の用量依存性はないが耳介腫脹の抑制を示した.耳介組織のサイトカインはOxa対照で減少し, OGT, USI, JTT, KRTの投与で減少が強められた.Oxa対照で増加した耳介組織のIgEはOGT, USI, JTTで抑制された.以上の結果から, OGT, USI, JTT, KRTは急性および慢性皮膚炎に対して有効であり, その抑制作用にはIgE産崖抑制が関係することが示唆された.
著者
小川 竜平 真鍋 厚史 中山 貞男 小口 勝司
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.118-127, 1994-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

カルシウム (Ca) とリン (P) の吸収, 排泄ならびに実験的骨粗鬆症の骨代謝に対するシュウ酸 (OA) , 酒石酸 (TA) の影響をWistar系雌性ラットを用いて検討した.1または3%のOAあるいはTAを含む飲料水を1~3週間自由に摂取させCa, Pの糞中, 尿中排泄量を測定した.OAおよびTAともCaの糞中排泄をいずれの摂取期間においても明らかに増加させた.Pの糞中排泄もOAおよびTA摂取により増加あるいは増加傾向を示した.一方, CaおよびPの尿中排泄には明らかな変化は認められなかった.すなわちOAおよびTAはCa, Pの腸管からの吸収阻害により糞中排泄を増加させたと考えられる.卵巣摘出 (OVX) による実験的骨粗鬆症に対する影響は, 1%OA (OVX・OA) , 1%TA (OVX・TA) を6カ月間自由摂取させ検討した.大腿骨と脛骨の灰分重量と乾燥重量の比は灰分重量の減少によってShamに比較しOVX, OVX・OA, OVX・TAにおいても低下したが, 3群問に差は認められなかった.大腿骨, 脛骨のCaはOVXで減少を示し, OVX・OAとOVX・TAではこの減少が著明に促進された.骨中PはOVXで有意な減少を示さなかったが, OVX・OAとOVX・TAではSham, OVXに比べて減少を示した.組織学的にはOVX・OA, OVX・TAで脛骨骨幹端部の骨梁の減少および単位骨量の減少を認めた.以上の結果より, OAとTAは腸管からのCaとPの吸収を阻害し骨粗鬆症を悪化させる可能性が示唆された.
著者
奥村 昌恵 齊川 真聰 山浦 卓 小口 勝司 中山 貞男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.229-236, 2002-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

アトピー性疾患は, 近年増加の一途をたり, その難治化は世界中で大きな問題となっている.特に, アトピー性皮膚炎はTh1型, Th2型アンバランスにより起こる皮膚アレルギー炎症で, 再発性のある事が知られており, その治療法も多岐にわたっている.今回我々は, 鍼刺激の, 皮膚アレルギー炎症モデルマウスに対する効果について検討を行った.まず, ICRマウスをオキサゾロンによって感作した後, 誘発時より鍼刺激を開始した.皮膚アレルギー炎症の指標として, マウスの耳介腫脹率の変化, 耳介重量及び, サイトカイン類はELISA法にて測定した.その結果, 鍼刺激群は対照群と比べ, マウスの耳介腫脹率及び耳介重量を抑制した.血清サイトカイン類の検討では, 鍼刺激群ではIL-2, IFN-γ, 及びIL-10産生を抑制した.また, 耳介組織サイトカイン類の検討では, IL-4, Ig-E及びIFN-γ産生の抑制を示した.以上の結果から, 鍼刺激はICRマウスの皮膚アレルギー炎症に対して抑制的に作用することが示唆された.
著者
坂本 浩二 山内 真由美 中山 貞男 水流添 暢智 坂下 光明 藤川 義弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.187-193, 1987 (Released:2007-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

コレステロール負荷により誘発したウサギの高脂血症ならびに動脈硬化症に対するNIP-200(3,5-dimethyl-4,6-diphenyl-tetrahydro-2H-1,3,5-thiadiazine-2-thione)の作用を検討した.NIP-200は1%コレステロール飼料(HCD)に0.2%(w/w)添加した混餌飼料として,1日1回100g/匹を与え,16週間飼育した.HCD,NIP-200各群の体重増加と飼料摂取量は対照と比ぺて差がみられなかった.NIP-200は飼育4,10,14週において,HCD飼育による血漿の総脂質,総コレステロール(TC),リン脂質(PL),遊離コレステロールの増加を抑制した.高密度リポ蛋白中のTC(HDL-TC)はHCDの飼育2週,10~16週とNIP-200の飼育6~16週において,対照に比べて増加を示した.HDL-PLはNIP-200飼育6~10週においてHCD以上の増加を示した.TCとHDL-TCを用いたatherogenic indexはNIP-200飼育4,12週に低下を示し,PLとHDL-PLを用いたそれはNIP-200飼育4,6週と10~14週に低下を認めた.走査型電子顕微鏡による大動脈弓部内腔表面構造の観察では,脂肪斑の減少,内腔の山波形の溝の消失と内皮細胞核の膨化を抑制するなど,NIP-200はHCD飼育による形態変化を改善した.これらの結果から,NIP-200の脂質低下作用は腸管における脂質吸収抑制と肝における異化排泄促進によって発現する可能性が示唆された.また,NIP-200の抗動脈硬化作用には血漿HDL-TC,HDL-PL増加による脂質代謝改善が関与しているものと推測される.
著者
真柳 誠 中山 貞男 小口 勝司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.115-121, 1992-02-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
8 6

セリ科和漢薬より8種の熱水抽出エキス (HWE) と2種のタンニン除去画分 (DTF) を調製し, ラット肝の脂質過酸化物 (LPO) 形成, およびaminopyrine N-demethylase (APD) 活性とaniline hydroxylase (ANH) 活性に対するHWEとDTFの影響をin vitroで検討した.APD活性に対し, 白正のHWEとDTFおよび茴香・前胡・当帰・川〓・防風・柴胡のHWEは抑制を示したが, 茴香のDTFによる影響は見られなかった.ANH活性に対し, 白〓・茴香のHWEとDTF, および防風・前胡・北沙参・当帰のHWEが抑制を示した、LPO形成に対し, 前胡・白〓・川〓のHWEは抑制を示したが, 柴胡・茴香・防風・北沙参のHWEは促進を示した.茴香のDTFの結果より, APD活性とANH活性に対し作用を及ぼした茴香の成分は異なっていることが示唆された.白正はAPD活性とANH活性に対し著明な抑制作用を示したことから, invivoにおいても薬物代謝酵素活性に影響を与える可能性が考えられた.