著者
小暮 健太朗 濱 進 梶本 和昭
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.131-137, 2015 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8

イオントフォレシスは,微弱電流を皮膚に適用することで低分子薬物の皮膚透過を促進する物理的薬物経皮吸収促進法であり,皮膚上での電気泳動である。従来,皮膚は堅牢なバリアーであるため低分子薬物しか透過できないと考えられてきたが,最近様々な高分子も透過することが明らかになってきた。さらに,微弱電流によって皮膚の生理が変化することも明らかになりつつある。本稿では,微弱電流による高分子・ナノ粒子の皮内送達に関する最近の知見を紹介したい。
著者
原島 秀吉 小暮 健太朗 秋田 英万 山田 勇磨
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本年度は、アジュバントのトポロジー制御の観点からアジュバント搭載型ナノ構造体の構築とその機能評価を行った。まず認識受容体の局在が異なる2種類のアジュバントを搭載したMENDの構築を行い、細胞性免疫誘導効率への影響を調べた。polyI:Cはエンドソーム内のTLR3及び細胞質中のMda5により認識され、CpG-ODNはエンドソーム内のTLR9によって認識される。それ故、細胞への取り込み後に認識されるように、MENDの内部に抗原と共に内封した。polyI:CもしくはCpG-ODNを内封したMENDをマウスに皮下免疫し、CTL活性を測定した結果、polyI:C内封MENDを免疫したマウス群では、CpG-ODN搭載MENDを免疫した群と比較して著しく高いCTL活性の誘導が認められた。次にpolyI:C搭載MENDとpolyI:C/R8複合体のCTL活性誘導能を比較した。その結果、polyI:C搭載MENDを免疫したマウス群の方が高いCTL活性及び抗腫瘍活性を示した。MEND内にpolyI:Cを内封することで、効率良くTLR3及びMda5に認識され、強力な細胞性免疫が誘導されたと考えられる。このことからアジュバントの機能を十分に発揮させるためには、そのトポロジーを考慮することが重要であることが示唆された。またpolyI:CをMEND内に内封することでアジュバント投与時の炎症等の副作用が軽減されるかを調べた。polyI:C搭載MEND及びpolyI:C単独をマウス尾静脈から投与し、2時間後の炎症性サイトカインIL-6の産生を調べた。その結果、polyI:C搭載MEND投与群では、polyI:C単独投与群と比較してIL-6産生の著しい抑制が認められた。以上の結果より、効率的な細胞性免疫誘導及び副作用の軽減には、アジュバントのトポロジーを考慮したワクチン設計が重要であることが明らかになった。