著者
小曽戸 和夫 蔀 花雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.18-21, 1961

リンゴ酸,クエン酸,酒石酸の蔗糖転化率を求めた結果,この順に大きくなり,解離恒数の大きいほど転化率も大きいことが認められた。果実罐詰内においてもpHが低いほど蔗糖残存率は少なく,また同一酸濃度では酒石酸のpHがもっとも低く,リンゴ酸がもっとも高かった。罐詰製造時の加熱処理に際してかなりの量の転化糖を生成するが,それ以後貯蔵中においても転化は進行し,酸無添加でも蔗糖残存率は製造後5年経過すると白桃で17~21%,洋梨で29%に過ぎなかった。白桃および洋梨罐詰の色調は蔗糖を使用したものよりブドウ糖を用いたものの方が淡かった。また桃ジュースに蔗糖または転化糖,酸としてリンゴ酸,クエン酸,酒石酸を配合したものを加熱処理した結果,蔗糖より転化糖の方が着色し,クエン酸,リンゴ酸,酒石酸の順に着色が強くなった。以上の結果から白桃,洋梨罐詰の色調を淡く仕上げるにはできるだけ蔗糖の転化を抑えるようにし,酸を添加するときにはクエン酸がもっともよいことを認めた。<BR>実験に協力いただいた数見秀次郎氏に感謝の意を表する。本報は1959年11月28日,日本農芸化学会東北支部小集会および1960年4月4日農産加工技術研究会第7回大会にて口演した。
著者
小曽戸 和夫 蔀 花雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.22-24, 1961

果実シラップ漬罐詰にクエン酸あるいは酒石酸のかわりにグルコン酸の利用を試みた。グルコン酸の蔗糖転化率はリンゴ酸,クエン酸,酒石酸に比してかなり低く,また酸濃度が薄いときにはその差はいちじるしかった。蔗糖,ブドウ糖,転化糖などとグルコン酸とのかっ変をリンゴ酸,クエン酸と比較した結果,試験管内98℃,4時間の加熱ではグルコン酸が着色の度合はもっとも少なく,またそれらにグリシンを添加したときは蔗糖,転化糖はいずれの酸もかっ変が促進されたが,やはりグルコン酸がもっとも淡く,ブドウ糖はほとんど着色が認められなかった。桃ジュースに蔗糖または転化糖,酸としてリンゴ酸,クエン酸,酒石酸,グルコン酸などを配合して罐詰を製造し,製造直後および貯蔵中の色調を比較した結果,酒石酸≧グルコン酸>クエン酸≧リンゴ酸,転化糖>蔗糖で罐詰内ではグルコン酸に着色のいちじるしいことが認められた。なおグルコン酸を使用したものはいずれの糖でもつねに罐内面の腐蝕が認められたが,これはグルコン酸が重金属をキレイトする性質が非常に強いために生ずる腐蝕が,上部空隙中の酸素により促進されるものと推察した。<BR>グルコン酸について御教示をいただいた藤沢薬品工業株式会社 市川吉夫氏,実験に協力いただいた数見秀次郎,鈴木勝芳の2氏に感謝の意を表する。本報の要旨は1960年10月1日日本農芸化学会東北支部大会にて口演した。