著者
羽間 京子 保坂 亨 小木曽 宏
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.13-19, 2011-03

長期欠席(不登校)児童生徒の中には,その背景に児童虐待が疑われる事例が含まれる。学校及び教職員は,児童虐待防止法により虐待の早期発見の努力義務が課せられているが,家庭訪問をしても児童生徒に会えず,状況確認ができない場合がある。本研究は,接触困難な長期欠席児童生徒(および保護者)に学校教職員がとりうるアプローチに関する議論の前提として,保護者の就学義務とその不履行について法的規定や裁判例を整理し,学校教職員の家庭訪問の法的位置づけとその限界を検討した。その結果,就学義務不履行による督促については,議論が「不登校」にマスキングされたまま弁別・整理されていないと考えられた。また,学校教職員の家庭訪問は教育活動の一環として位置づけられており,児童虐待の疑いがあったとしても,保護者が住居への立ち入りを拒否し児童生徒に会わせようとしない場合,教職員は子どもの安全確認まではできないことがその限界として指摘された。