著者
小松 志朗
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_421-2_443, 2012 (Released:2016-02-24)
参考文献数
13

This paper examines three cases of humanitarian intervention (Bosnia, Kosovo, and Libya) to show that intervening parties face challenges concerning the effectiveness of it. The analytical framework for this inquiry consists of ‘the relationship between the use of force and diplomatic negotiations’. The specific challenges are as follows: there are difficulties in defining the proper use of force in relation to diplomatic negotiations for a resolution of political conflict within a intervened state, and those are due to the uncertainty of communication between policymakers and the military within intervening parties; a gap between the use of force and diplomatic negotiations causes the uncertainty; and the gap has at least two variations, ‘the gap between means and end’ and ‘the gap between different ends’. The latter type of gap is especially noticeable since it reflects the trend of the time, the rise of legitimacy of humanitarian intervention.
著者
小松 志朗
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.98-108, 2020-12-10 (Released:2021-10-02)
参考文献数
33

本稿の目的は,COVID-19の事例を通じて国際政治の視点から有効な感染症対策のあり方を探ることである。特に注目するのが,アメリカ,WHO,中国の関係である。アメリカとWHOは渡航制限をめぐって対立していた。対立が激化したのはそもそも渡航制限の効果に関して政治と科学が対立しているところに,WHOの指導力の弱さ,米中対立という要因が重なった結果である。米中対立に目を向ければ,それが民主主義と権威主義という異なる政治体制間の競争でもある点が,感染症対策との関連で重要になる。国内対策はしばしば個人の自由や権利を制限する「強い措置」を含むことから,民主主義国にとっては強い措置が果たして採用すべき有効な対策なのかどうかが難しい問題となる。しかし,いくつかの研究が示唆するように,「強い措置=有効な対策」の等式が常に成り立つわけではない。感染症対策の強制性と有効性は別物であり,概念上はいったん区別するべきだろう。以上の分析を踏まえると,国際政治の文脈で,有効な感染症対策を実現するために求められるのは,次の2点である。政治と科学の連携を促すためにWHOの機能・権限を強化すること,そして「強い措置=有効な対策」という等式を前提にせず科学の判断に耳を傾けることである。いま国際社会が必要としているのは,強い措置よりもまずは強いWHOである。
著者
小松 志朗 浅井 雄介
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-07-18

本研究の目的は、グローバルな感染症対策における人の国際移動の管理の課題と、その解決策を明らかにすることである。前年度の研究において課題の方は概ね明らかにできたので、今年度は解決策の検討に重点を置いた。本研究では、航空機による移動に焦点を絞っていることから、人の国際移動の管理とは空港での国境管理を意味する。国境管理の具体的な中身は移動制限(渡航制限)をはじめとして様々なものがあり、それらを効果的に組み合わせて感染症の輸入リスクを低減させること、あるいは国内対策の準備のために「時間稼ぎ」をすることが管理の目的であり、しかもそれを資源と時間が限られた状況下で実現しなくてはならない。この点については、各国政府にとって国境をどの程度開放/閉鎖すべきなのかという問題は判断の難しい「究極の選択」であると考え、他分野の類似の問題との比較もしながら理論的、倫理的な考察を深めた。そのようにして解決策の骨格を描く一方で、最も有効な国境管理のあり方を具体的に示す理論上のモデル(グローバル管理モデル)の構築を目指し、特に重要な管理措置である移動制限の効果を測るために、投薬、ワクチン接種、感染者の隔離という3つの措置と比較するシミュレーションを行った。その結果、移動制限は10%の制限でも効果があり、理論上は他の3つよりも効果的な措置であることが明らかになった。ただし、その効果は制限の開始時期に大きく影響を受け、開始が遅ければ大流行を防げない可能性が高いことも分かった。移動制限の効果と限界を理論的に把握したことで、グローバル管理モデルの構築の土台を固めることができた。
著者
小松 志朗
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2011

制度:新 ; 報告番号:甲3377号 ; 学位の種類:博士(政治学) ; 授与年月日:2011/4/13 ; 早大学位記番号:新5699