著者
小林 豊 飯干 茜 渡邉 博文 井出 和希 堀内 祐希 手島 麻美子 中川 喜文 山口 安乃 小林 伸一郎 谷口 幹太 関 泰 榊間 昌哲 鈴木 豊秀
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.347-355, 2021 (Released:2021-12-29)
参考文献数
12

CKDシールは、腎機能情報共有により患者に有効かつ安全な薬物療法を提供することを目的に各地で検討されている。CKDシールに対する病院・薬局薬剤師のニーズに関する調査は存在するものの、患者が腎機能情報共有の必要性をどのように理解しているかは不明である。静岡県富士宮市でCKDシール貼付システムを構築するとともに、富士宮市立病院でシールを貼付した患者のニーズと、同地域における腎機能情報共有の現状と課題を調査した。2019年7月10日からの3か月間にお薬手帳にCKDシールの貼付を提案した228名の患者全員より同意を得た。医師と作成したプロトコルに基づく貼付を行った患者は62名(27%)であった。アンケートは入院患者、腎臓病教室受講患者、維持透析患者74名中67名(G3b/G4/G5/G5D=7/12/11/37、回答率91%)及び、腎臓病薬物療法の研修会に参加した薬局薬剤師20名中19名(回答率95%)から回答を得た。保険薬局で薬を貰った経験は患者51名(76%)が有したが、51名のうち腎機能を伝えた患者は10名(20%)のみであり、薬局薬剤師から腎機能を聞かれた患者は15名(29%)のみであった。一方、薬局薬剤師16名(84%)は検査値を入手できた時にのみ腎機能を確認していた。腎機能により薬を調節することへの患者の認知度は29名(43%)と低く、CKDシール貼付開始を全ての患者と薬局薬剤師が期待すると回答した。薬局薬剤師のCKDシール活用方法は用法用量等の確認だけでなく、患者とのコミュニケーションや生活指導が挙げられた。患者は薬局薬剤師に腎機能情報が必要との認識が低く、腎機能の共有はされていなかった。CKDシールが薬物療法適正化につながるだけでなく、腎機能情報共有の意義を患者に説明し理解を得ることで、CKDシールが貼られたお薬手帳の活用と薬剤師による腎臓病療養指導につながる可能性が示唆された。
著者
樋口 輝美 堀田 直 石川 由美子 山道 慎也 會所 拓斗 二階堂 杏子 瀬戸口 晴美 山崎 俊男 大川 恵里奈 安藤 英之 及川 治 小林 伸一郎 阿部 雅紀 岡田 一義
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.477-482, 2015 (Released:2015-08-28)
参考文献数
21

症例は58歳男性. 糖尿病性腎症による末期腎不全にて血液透析を導入された. 心エコー検査で, EFは48.9%で, E/e’も19.5と収縮障害と拡張障害を認め, LVMIも151g/m2と左室肥大を認めた. ESAsはrHuEPOを9,000単位/週を使用し, ERIはrHuEPO doses/kg/g/dL/週として算出し, 13.5と比較的高値を認め, レボカルニチン1,200mg/日で内服療法を開始した. 開始前と1年後の経過で, EFは48.9%から72.7%, LVMIも151g/m2から107g/m2, NT-proBNPは12,800pg/mLから7,850pg/mLへと改善した. 内服開始前の使用rHuEPOは9,000単位/週で, 開始前のERIは13.5と高値であったが, rHuEPOは3,000単位/週に減量し, ERIは3.9まで低下した. 動脈硬化症の指標のbaPWVは1,832cm/secから1,545cm/secと改善した. また上腕筋面積は, 32.9cm2から39.3cm2に上昇し, ALT, ASTは12U/L, 14U/Lで, それぞれ9U/Lと軽度低下した. レボカルニチンの投与により, 種々のパラメーターが改善した症例を経験したので報告する.