著者
小林 勝年 儀間 裕貴 北原 佶
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-10, 2020 (Released:2020-09-24)
参考文献数
12

療育とは児童福祉の精神に依拠しながらも「不治」という医療の限界を超えた課題に対する教育との架橋的試みから始まり,医療と育成の合成語として誕生した.これまで,医療モデルと生活モデルという異なる障害モデルより療育の目標や方法なども異なる療育が実践されてきた.しかし,今日では人間発達における生物心理社会モデルの浸透などにより生活モデルに集約される傾向にあり,「発達の最適化」が療育の共通目標として認識されつつある.すなわち,発達的可能性をどのように保障しているかという点に注目が寄せられたが,その議論を前進させるのは研究デザインによって位置づけられるエビデンスレベルと療育実践におけるエビデンス検証である.が,こうした包括的アプローチにおいては安易な時間的展望の中で処理されたり,低いエビデンスレベルのまま実践されるという陥穽が用意されていることを忘れてはなるまい.
著者
寺川 志奈子 田丸 敏高 石田 開 小林 勝年 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.274-285, 2011

5,6歳児が,4人のグループで均等分配できない15個の飴を分配するという,対人葛藤が生起しやすい場面においてどのような行動をとるか,分配場面に至るまでに遊びを通して形成されてきたグループのピア関係の質との関連において検討することを目的として,「保育的観察」という約45分間の保育的な遊びのプログラムを設定した。保育的観察は,初めて出会う同性同年齢の4人が,保育リーダーのもと,親子遊び,親子分離,子ども4人だけの自由場面1,保育リーダーによって組織された遊び(あぶくたった),再び子どもだけの自由場面2,子どもどうしによる飴の分配を経験するという一連の過程からなる。グループの遊びの質的分析から,自由場面1から2にかけて,4人の遊びが成立しにくい状態から,5歳児は「同調的遊び」へ,6歳児は「テーマを共有した,役割分担のあるルール遊び」へと,4人がいっしょに,より組織化した遊びに参加するようになるという時系列的変化が明らかになった。すなわち,遊びを通してグループのピア関係の成熟度が高まっていくプロセスが捉えられた。また,飴の分配に関しては,6歳児では,自由場面2においてピアとして高い成熟度を示したグループの方が,そうでないグループに比べて,均等分配できない数の飴の分配という対人葛藤が生起しやすい場面において,グループ全体を意識した相互交渉による問題解決を図ろうとすることが明らかになった。