著者
小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.207-211, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Dyslexiaのおもな病態は, 音韻処理障害という脳機能の障害であると考えられるようになった. DyslexiaはDSM-5では神経発達障害に分類されていて, 読字障害という限局性学習障害の代替的な用語であると記載されている. つまりdyslexiaは一つの臨床的な単位であるとみなされるようになった.  本邦においても診断や治療にかかわる臨床的な研究が進んできている. 我々が開発した音読検査は, dyslexiaの診断に向けた検査として, 診療報酬点数の算定ができるし, 音読困難という症状を緩和する指導法の開発も進んできている. Dyslexiaは教育の問題として考えるだけでなく, 医療の対象とすべき時が来ている.
著者
安立 多恵子 平林 伸一 汐田 まどか 鈴木 周平 若宮 英司 北山 真次 河野 政樹 前岡 幸憲 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-181, 2006-05-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

注意欠陥/多動性障害 (AD/HD), Asperger障害 (AS), 高機能自閉症 (HFA) の状況認知能力に関する特徴を検討するために, 比喩文と皮肉文から構成されている比喩・皮肉文テスト (MSST) を開発した. 今回はAS群66名, HFA群20名, AD/HD群37名を対象とし, MSSTの得点プロフィールを比較した. その結果, AS群では皮肉文の得点が特異的に低かったが, HFA群とAD/HD群では比喩文と皮肉文の得点に差がなかった. 以上より, AS群の特徴は言語能力が良好であるにもかかわらず, 皮肉という状況の理解困難であろうと考えられた.
著者
小枝 達也 内山 仁志 関 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.384-388, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
16

通常学級に在籍する小学1年生69名 (男/女=33/36) に実施した単文音読検査によって発見されたディスレクシア児に対して, 2段階方式の音読指導を行った. はじめに文字の解読が容易にできるようになることに力点を置いた解読指導を行い, 次に単語形体の認識を高めるための語彙指導を実施した. その結果, 解読指導は誤読数の減少に, 語彙指導は音読時間の短縮に効果があることが示唆された.
著者
小枝 達也 関 あゆみ 田中 大介 内山 仁志
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.270-274, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
6

【目的】Response to intervention (RTI) の導入による特異的読字障害の早期発見と早期介入の可能性を検証する. 【方法】小学校1年生 (77名 ; 男児36名) を対象として, RTIを導入して特異的読字障害の早期発見と介入を行い, 3年生での予後を調査する. 【結果】1年生時に4名の音読困難のある児童が発見された. その4名に音読指導 (解読指導と語彙指導) を実施した結果, 3名は音読困難が軽快したが, 1名は特異的読字障害であると診断された. 3年生時には1年生時に発見された1名が特異的読字障害であり, 新たに診断に該当する児童はいなかった. 【結論】1年生時にRTIを導入することで, 特異的読字障害の早期発見と早期介入が可能になると考えられる.
著者
小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.145-149, 2005-03-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) や学習障害 (LD) を含めた知的な遅れが明らかではない発達障害児を適正に発見する方法の一つとして, 鳥取県で実施されている5歳児健診と5歳児発達相談の概要について記した.AD/HDやLDおよび識語発達のよい広汎性発達障害児は3歳児健診までの乳幼児健診では, 発達上の問題を指摘されていないことが多く, 指摘されている場合であってもほとんどが識葉の遅れであった.落ち着きのなさや特異的な認知障害, 対人関係の障害などは3歳児健診までの乳幼児健診では気づきにくい問題であり, 5歳を過ぎてから行う新たな健診ないしは発達相談の設置が必要であると考えられた.また, 健診と事後相談を一つのパッケージとして, 保護者の子育て不安や育てにくさなどの訴えに寄り添う形で継続的に見ていく体制が, 知的な遅れが明らかではない発達障害児の適正な発見と学校教育へのつなぎの役割を果たすことができると考えており, そのモデルを示した.
著者
小枝 達也 汐田 まどか 赤星 進二郎 竹下 研三
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.461-465, 1995-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

We followed children with the risk factors for learning disability (LD) at the three year-old screening prospectively. The five risk factors were speech delay, hyperkinesia, delayed social skill, delayed comparative conception (big and small, long and short) and mutistic behaviour. We evaluated seventeen elementary school children using WISC-R and the Pupil Rating Scale Revised. Six of them were diagnosed as normal, six were learning-disabled, and five were mentally retarded children. We proposed that the screening of LD at three years by the risk factors were effective but only partially.
著者
吉田 たまほ 小枝 達也
出版者
鳥取大学地域学部
雑誌
地域学論集 (ISSN:13495321)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.67-77, 2010-06
著者
多門 裕貴 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.79-85, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
14

【目的】社会的コミュニケーション症(SCD)は,言語的および非言語的なコミュニケーションの社会的使用に困難さを示すことから自閉スペクトラム症(ASD)との鑑別が重要となるが,参考となる補助検査所見が乏しい.本研究ではSCDとASDの鑑別に有用な補助検査について検討した.【方法】SCD群5 名,ASD群25名に対して対人応答性尺度(SRS-2),比喩皮肉文テストを実施・検討した.【結果】SRS-2の(1)社会的コミュニケーションと対人的相互交流(SCI)および(2)興味の限局と反復行動(RRB)のT得点は,ASD群ではいずれも臨床域,SCD群ではSCIは臨床域でRRBは臨床域未満であった.比喩皮肉文テストではSCD群では皮肉文の正答率が極めて不良であった.【考察】SRS-2と比喩皮肉文テストの組み合わせによりSCDとASDの臨床的な相違点が明らかになり,両者は臨床的に異なった疾患概念である可能性が示唆された.【結論】SRS-2と比喩皮肉文テストは,SCDとASDの鑑別に有用な補助検査になり得る.
著者
北 洋輔 小林 朋佳 小池 敏英 小枝 達也 若宮 英司 細川 徹 加我 牧子 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.437-442, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

全般的知能正常で読み書きにつまずきを持つ小中学生98名 (発達性読み書き障害, すなわちdevelopmental dyslexia (DD) 群24名と非DD群74名) に対して, 読字・書字各15項目からなる臨床症状チェックリスト (以下CL) を適用し, ひらがな音読能力を検討した. 信頼性分析の結果, CL各13項目の妥当性が示され, 音読4課題成績との関連性が認められた. DD群は非DD群より多くの臨床症状を有しており, 音読課題の成績低下も顕著であった. 臨床症状が7つ該当し, 音読課題2つに異常がみられる場合, DD群は感度 (79.7%) と特異度 (79.2%) がバランス良く, 非DD群と弁別された. 以上より, DDの医学的診断における本CLの臨床的有用性が示された.
著者
安立 多惠子 平林 伸一 汐田 まどか 鈴木 周平 若宮 英司 北山 真次 河野 政樹 前岡 幸憲 小枝 達也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 = OFFICIAL JOURNAL OF THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-181, 2006-05-01
参考文献数
12
被引用文献数
2

注意欠陥/多動性障害 (AD/HD), Asperger障害 (AS), 高機能自閉症 (HFA) の状況認知能力に関する特徴を検討するために, 比喩文と皮肉文から構成されている比喩・皮肉文テスト (MSST) を開発した. 今回はAS群66名, HFA群20名, AD/HD群37名を対象とし, MSSTの得点プロフィールを比較した. その結果, AS群では皮肉文の得点が特異的に低かったが, HFA群とAD/HD群では比喩文と皮肉文の得点に差がなかった. 以上より, AS群の特徴は言語能力が良好であるにもかかわらず, 皮肉という状況の理解困難であろうと考えられた.
著者
小枝 達也 竹下 研三
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.191-194, 1988

利き手の矯正と仮名の誤りとの関係について, 普通小学生417名にアンケート調査と作文の詳細な検討を行った. 幼児期に左手利きから右手利きに変わった児では, 仮名の誤りは少なく, 左手利きのままの児と右手利きから左手利きに変わった児のグループに, 学習能力障害などの発達障害児によく認められる仮名の誤りが多かった (P<0.01). このことより, 左手利きの幼児に対し利き手の矯正は試みても良いと思われた. また, 仮名の誤りが多い学童では, 発達障害を疑い過去の利き手とその矯正の有無についても知る必要があると考えられた.
著者
橋本 和広 小枝 達也 松原 康策 太田 茂 大野 耕策 大村 清
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.381-385, 1990-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

3カ月より著明な肝脾腫をきたし, 2歳10カ月頃より退行症状を認め, 徐々に発語も消失し歩行不能となり, 最終的には寝たきりとなり5歳2カ月で死亡したNiemann-Pick病の1例を経験したので報告した.患児の培養皮膚線維芽細胞の酵素学的検査においてsphingomyelinase活性軽度低下と著明なコレステロールのエステル化の障害を認め, 培養皮膚線維芽細胞のフィリピン染色にて特徴的な所見を呈し, Niemann-Pick病C型と診断した.患児の治療に精製dimethyl sulfoxide (DMSO) を使用したが, 脾腫の縮小傾向を認めたものの退行症状を改善することはできなかった.
著者
小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.89-94, 1998-07-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
15
著者
寺川 志奈子 田丸 敏高 石田 開 小林 勝年 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.274-285, 2011

5,6歳児が,4人のグループで均等分配できない15個の飴を分配するという,対人葛藤が生起しやすい場面においてどのような行動をとるか,分配場面に至るまでに遊びを通して形成されてきたグループのピア関係の質との関連において検討することを目的として,「保育的観察」という約45分間の保育的な遊びのプログラムを設定した。保育的観察は,初めて出会う同性同年齢の4人が,保育リーダーのもと,親子遊び,親子分離,子ども4人だけの自由場面1,保育リーダーによって組織された遊び(あぶくたった),再び子どもだけの自由場面2,子どもどうしによる飴の分配を経験するという一連の過程からなる。グループの遊びの質的分析から,自由場面1から2にかけて,4人の遊びが成立しにくい状態から,5歳児は「同調的遊び」へ,6歳児は「テーマを共有した,役割分担のあるルール遊び」へと,4人がいっしょに,より組織化した遊びに参加するようになるという時系列的変化が明らかになった。すなわち,遊びを通してグループのピア関係の成熟度が高まっていくプロセスが捉えられた。また,飴の分配に関しては,6歳児では,自由場面2においてピアとして高い成熟度を示したグループの方が,そうでないグループに比べて,均等分配できない数の飴の分配という対人葛藤が生起しやすい場面において,グループ全体を意識した相互交渉による問題解決を図ろうとすることが明らかになった。
著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部 清美 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英 若宮 英司 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.15-21, 2010 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

読みの能力の発達を明らかにするため, ひらがな読みに特化した仮名表記の単音, 非単語, 単語, 単文4種類の音読課題を作成し, 通常学級在籍中の児童528名の音読に要した時間, 誤読数を解析した. 時間は全課題とも1年生が有意に長く, 学童期の前半に短縮し, 単音と非単語課題では5年生以降の, 単語と単文課題では4年生以降の変化が少なかった. 単語と単文課題の音読所要時間には強い相関がみられた. 一方, 誤読は全課題で少なく, 最初に読み誤るもののすぐに自己修正されるものや語頭音を繰り返して読むパターンは対象の半数にみられた. 今後は読みのつまずきを有する児童の所見と比較し, 簡便な音読検査としての活用法を検討していきたい.
著者
小枝 達也
雑誌
日本小児科学会雑誌 (ISSN:00016543)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.1332-1335, 2001-12-01
被引用文献数
10
著者
定藤 規弘 岡沢 秀彦 小坂 浩隆 飯高 哲也 板倉 昭二 小枝 達也
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

「向社会行動は、自他相同性を出発点として発達し、広義の心の理論を中心とした認知的社会能力を基盤として、共感による情動変化ならびに、社会的報酬により誘導される」との仮説のもと、他者行為を自己の運動表象に写像することにより他者行為理解に至るという直接照合仮説を証明し、2個体同時計測fMRIシステムを用いて間主観性の神経基盤を明らかにした。自己認知と自己意識情動の神経基盤並びに自閉症群での変異を描出したうえで、向社会行動が他者からの承認という社会報酬によって動機づけられる一方、援助行動に起因する満足感(温情効果)共感を介して援助行動の動因として働きうることを機能的MRI実験により示した。