著者
三木 裕和 川地 亜弥子 寺川 志奈子 山根 俊喜 赤木 和重 國本 真吾 越野 和之
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究の目的は、自閉症、発達障害の教育実践における教育目標・教育評価の構造を明らかにすることであった。学校教員と大学研究者の合同研究会を、のべ18日間に渡って行い、数多くの授業実践を検討した。その結果、社会性の障害に対して、社会適応行動の獲得が重視される傾向にあるが、文化、科学の伝達、習得をめざした教材、授業が可能であることが明らかになった。また、人と共感すること、創造的に考えることを教育目標とした授業も多く見られた。強度行動障害についは、自閉症の障害特性に応じた環境が推奨されているが、学校教育全般における、共感的情動体験の蓄積がより有効であると推察された。
著者
寺川 志奈子 田丸 敏高 石田 開 小林 勝年 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.274-285, 2011

5,6歳児が,4人のグループで均等分配できない15個の飴を分配するという,対人葛藤が生起しやすい場面においてどのような行動をとるか,分配場面に至るまでに遊びを通して形成されてきたグループのピア関係の質との関連において検討することを目的として,「保育的観察」という約45分間の保育的な遊びのプログラムを設定した。保育的観察は,初めて出会う同性同年齢の4人が,保育リーダーのもと,親子遊び,親子分離,子ども4人だけの自由場面1,保育リーダーによって組織された遊び(あぶくたった),再び子どもだけの自由場面2,子どもどうしによる飴の分配を経験するという一連の過程からなる。グループの遊びの質的分析から,自由場面1から2にかけて,4人の遊びが成立しにくい状態から,5歳児は「同調的遊び」へ,6歳児は「テーマを共有した,役割分担のあるルール遊び」へと,4人がいっしょに,より組織化した遊びに参加するようになるという時系列的変化が明らかになった。すなわち,遊びを通してグループのピア関係の成熟度が高まっていくプロセスが捉えられた。また,飴の分配に関しては,6歳児では,自由場面2においてピアとして高い成熟度を示したグループの方が,そうでないグループに比べて,均等分配できない数の飴の分配という対人葛藤が生起しやすい場面において,グループ全体を意識した相互交渉による問題解決を図ろうとすることが明らかになった。