著者
小林 正武 南里 和紀 田中 伸幸 長谷川 明 田口 丈士 齊藤 和裕
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.704-709, 2010 (Released:2010-11-04)
参考文献数
25
被引用文献数
1

症例は76歳女性である.12年前に多系統萎縮症と診断され徐々に歩行障害が進行し独歩困難となった.頭部MRI T2強調画像で両側被殻は低信号,その外側に線状高信号をみとめ,SPECTでは両側線条体の血流低下所見をみとめた.抗GAD抗体陽性1型糖尿病,抗甲状腺抗体陽性,抗内因子抗体陽性ビタミンB12欠乏症であり多腺性自己免疫症候群3型に関連したパーキンソニズムと診断,ビタミンB12筋注治療,大量免疫グロブリン療法により安定した歩行が可能となった.診断困難な難治性神経疾患患者を診療する際には多腺性自己免疫症候群に関連したビタミンB12欠乏症,自己免疫機序の神経障害である可能性を考慮し十分な鑑別診断をおこなう必要がある.