著者
上田 優樹 木村 亮之 藤森 浩司 勇内山 大介 田口 丈士 赫 寛雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.676-679, 2023 (Released:2023-10-25)
参考文献数
9

症例は40歳女性.月経時に出現する右下腿と足背の異常感覚,右腰殿部と大腿部の疼痛が出現し,他院で腰椎椎間板ヘルニアと診断された.発症13ヶ月後から右下垂足が出現し,当院を受診した.右坐骨神経領域の筋力低下と感覚障害に加え,神経伝導検査における右浅腓骨神経と腓腹神経の感覚神経活動電位の振幅低下から,骨盤内の病変が示唆された.骨盤部MRIで右卵巣から坐骨神経にかけて異常信号を認め,子宮内膜症による坐骨神経障害と診断した.ホルモン治療を開始して症状は軽快したが,下垂足が残存した.女性で月経時に悪化・出現する坐骨神経痛や下肢の感覚・運動障害では,子宮内膜症の可能性を考慮する必要がある.
著者
小林 正武 南里 和紀 田中 伸幸 長谷川 明 田口 丈士 齊藤 和裕
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.704-709, 2010 (Released:2010-11-04)
参考文献数
25
被引用文献数
1

症例は76歳女性である.12年前に多系統萎縮症と診断され徐々に歩行障害が進行し独歩困難となった.頭部MRI T2強調画像で両側被殻は低信号,その外側に線状高信号をみとめ,SPECTでは両側線条体の血流低下所見をみとめた.抗GAD抗体陽性1型糖尿病,抗甲状腺抗体陽性,抗内因子抗体陽性ビタミンB12欠乏症であり多腺性自己免疫症候群3型に関連したパーキンソニズムと診断,ビタミンB12筋注治療,大量免疫グロブリン療法により安定した歩行が可能となった.診断困難な難治性神経疾患患者を診療する際には多腺性自己免疫症候群に関連したビタミンB12欠乏症,自己免疫機序の神経障害である可能性を考慮し十分な鑑別診断をおこなう必要がある.