著者
松本 (向山) 晴美 妻鹿 絢子 小林 豊子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.613-617, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

有機酸塩によるゲル形成能の低下抑制作用について, その分子量的変化を生成還元糖の測定, ゲル濾過法などにより検討し, 以下の結果を得た.1) 寒天の加水分解により生成される還元糖量は, 溶解寒天液に供試液を添加後, 加熱しない場合には, 供試液組成と関係なくわずかで, いずれもゲル形成能の喪失は認められなかった.しかし, 供試液添加後加熱した場合には, その加熱時間の経過に伴い, 還元糖量が増加したが, この傾向は1%次いで0.68%クエン酸溶液添加において, とくに顕著であった.これに対し, クエン酸にクエン酸カリウムを添加した試料の還元糖量は, 対照として用いた水とほぼ等しく低い値であった.2) 生成還元糖量のごくわずかな増減がゲル形成能に影響するため, ゲル濾過法を用いて, 寒天のゲル形成能と分子量との関係について検討を行った結果, ゲル形成能の喪失は寒天の高分子レベルでの加水分解によるわずかな分子変化によることが明らかとなった.3) クエン酸による寒天の加水分解は, 加熱時間および濃度の上昇に伴い, しだいに低分子物質への分解が促進されるが, クエン酸カリウムの添加はこれを抑制した.