著者
松本 (向山) 晴美 妻鹿 絢子 小林 豊子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.613-617, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

有機酸塩によるゲル形成能の低下抑制作用について, その分子量的変化を生成還元糖の測定, ゲル濾過法などにより検討し, 以下の結果を得た.1) 寒天の加水分解により生成される還元糖量は, 溶解寒天液に供試液を添加後, 加熱しない場合には, 供試液組成と関係なくわずかで, いずれもゲル形成能の喪失は認められなかった.しかし, 供試液添加後加熱した場合には, その加熱時間の経過に伴い, 還元糖量が増加したが, この傾向は1%次いで0.68%クエン酸溶液添加において, とくに顕著であった.これに対し, クエン酸にクエン酸カリウムを添加した試料の還元糖量は, 対照として用いた水とほぼ等しく低い値であった.2) 生成還元糖量のごくわずかな増減がゲル形成能に影響するため, ゲル濾過法を用いて, 寒天のゲル形成能と分子量との関係について検討を行った結果, ゲル形成能の喪失は寒天の高分子レベルでの加水分解によるわずかな分子変化によることが明らかとなった.3) クエン酸による寒天の加水分解は, 加熱時間および濃度の上昇に伴い, しだいに低分子物質への分解が促進されるが, クエン酸カリウムの添加はこれを抑制した.
著者
妻鹿 絢子 藤木 澄子 細見 博子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.197-202, 1980-10-30
被引用文献数
2

1.市販牛角切り肉を1.5%酢酸溶液に5℃で40時間浸漬するマリネ処理により,官能的にも物理的測定からも肉がやわらかくなることが認められた。同時にマリネ処理肉のpHは4.5付近を示し,肉重量が増加した。2.同様のマリネ処理により,筋原繊維蛋白質中の分子量220,000daltonのミオシンが,150,000daltonfragmentすなわちHMMへと分解した。この時のミオシン分解率は肉中心部で22.3%,肉表層部で44.5%を示し,牛肉ホモジネートをp4.0に調整し,5℃で40時間インキュベートしたモデル実験におけるミオシン分解率46.9%にほぼ一致した。3。肉ホモジネートをpH4.0でインキュベートした場合,水溶性蛋白質が分解し,低分子窒素化合物が増加することが認められた。角切り肉をマリネ処理した場合には,蛋白質の分解により生成した比較的高分子の窒素化合物は肉中に保存され,低分子の窒素化合物は浸漬液中に溶出した。おわりに本研究を行うにあたり終始ご懇篤なる御指導御校閲を賜わりましたお茶の水女子大学荒川信彦教授に厚く御礼を申し上げます。
著者
妻鹿 絢子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.618-621, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

市販牛肉を実際の調理のさいのマリネ条件にもとづき, 角切り肉でマリネ処理した場合にも, 前報のホモジネートを用いた実験でみられたと同様のプロテオリシスが進行し, 筋原繊維蛋白質の部分分解および低分子化が起こることが認められた.また, マリネ処理において針入度の増加と切断応力の減少から肉の軟化が認められ, 肉重量の増加から保水性の増大が認められた.さらに, マリネ処理による低pHにおいて, 肉中のプロテアーゼにより筋原繊維蛋白質が分解し, 比較的高分子の蛋白質は保水性の増大にともなって肉漿中に保持されアミノ酸等の低分子物質は浸漬外液中に溶出した.
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 細見 博子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.199-203, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

マリネ処理時間および酸濃度の食肉蛋白質におよぼす影響について検討し, あわせてマリネ処理肉の官能検査を行った.1) 浸漬時間の経過および, 酸濃度の増加にともないマリネ肉のpH低下, 重量増加がみられ, 切断応力が経時的に減少して肉がやわらかくなることが認められた.2) マリネ処理により生じた水溶性窒素化合物の総量は半日~1日経過で著しく増加した.3) 酸の浸透にともない筋肉蛋白質中のミオシン主鎖の切断がおこり, 150,000 dalton fragmentへ移行することが認められた.4) 浸漬日数の経過にともない官能的にも肉がやわらかくなると判定された.また, 酸味を感じるパネル数も増加した.
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.79-82, 1983-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

市川らの報告をもとに, ショウガ根茎からショウガプロテアーゼを抽出, 精製し, そのプロテアーゼ活性の比較を行った.その結果, ショウガ搾汁, 酵素抽出液, 粗酵素液, 精製酵素B, 精製酵素Aの順にカゼイン分解物が増加し, 酵素の精製が進んだことが確認された.これら各精製段階のショウガプロテアーゼをpH5.037℃において, 筋原繊維蛋白質に対して3%になるように添加して作用させた.ショウガ搾汁を作用させた場合には, 反応時間60分におけるミオシン分解率は35.8%であったが, 最も蛋白分解力の強い精製酵素Aを作用させた場合には, 反応時間60分で62.3%におよぶミオシン分解率を示した.