著者
小林 郁奈 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.425, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

堅い殻に包まれたオニグルミ種子は、一般にアカネズミには採食されるが、より小型のヒメネズミには採食されない。しかし、アカネズミの分布しない新潟県粟島ではオニグルミ種子がヒメネズミに採食されると言われている(林ら、私信)。私たちの予備的観察では、佐渡島や粟島で小型のオニグルミ核果が多く観察されたため、オニグルミとヒメネズミの共進化が起こっているのではないかと予測した。そこで本研究では、島嶼3集団(粟島、佐渡島、金華山)および本州の7集団でオニグルミ核果を採取してサイズを計測し、さらに各集団から採取したオニグルミ計80個体を対象として、MIG-seq法を用いた集団遺伝学的解析を行うことで、島嶼と本州間での遺伝的分化と核果サイズ変異との関係を調査した。その結果、島嶼ではオニグルミの核果サイズが多様で、本州集団と比較すると小型だった。一方で島嶼と本州のオニグルミは遺伝的に分化しておらず、核果サイズ変異と遺伝的変異との関係は確認できなかった。また、野外にセンサーカメラを設置しヒメネズミがオニグルミ核果を持ち去るかどうかを撮影したところ、粟島では持ち去りが確認されたが、佐渡島では確認できなかった。