著者
片山 瑠衣 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.277, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

日本に自生するヤブツバキ(Camellia japonica)とユキツバキ(C. rusticana)は、ツバキ属ツバキ節(sect. Camellia)に属する。ヤブツバキは赤く大きな花弁を持つ鳥媒介植物であり、ユキツバキの花弁色や大きさは同様に鳥媒シンドロームに属するものである。しかし、先行研究によると、ユキツバキは昆虫が主要な花粉媒介者であることが報告されている。また、これらの在来種と比較して、アジア大陸に自生するツバキ属は、色や大きさにおいて、より多様な花形態を示す。これらの背景から、ツバキ節における系統解析は、花の進化過程の解明に大きく貢献できると考えられる。そこで本研究では、選択圧が大きく影響すると考えられる花形態に着目し、花形態の比較およびMIG-seq法を用いた分子系統解析を行うことで、日本産ツバキ節の種分化の要因と系統的な位置づけを探ることを目的とした。花形態の比較では、東アジアから東南アジアにかけて自生するCamellia属のうち、27種を対象に各3花ずつ採取して花形態の測定および解析を行った。その結果、花形態は節ごとに異なった傾向を示した。この結果をMIG-seqを用いた分子系統解析と合わせて考察する予定である。
著者
小林 郁奈 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.425, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

堅い殻に包まれたオニグルミ種子は、一般にアカネズミには採食されるが、より小型のヒメネズミには採食されない。しかし、アカネズミの分布しない新潟県粟島ではオニグルミ種子がヒメネズミに採食されると言われている(林ら、私信)。私たちの予備的観察では、佐渡島や粟島で小型のオニグルミ核果が多く観察されたため、オニグルミとヒメネズミの共進化が起こっているのではないかと予測した。そこで本研究では、島嶼3集団(粟島、佐渡島、金華山)および本州の7集団でオニグルミ核果を採取してサイズを計測し、さらに各集団から採取したオニグルミ計80個体を対象として、MIG-seq法を用いた集団遺伝学的解析を行うことで、島嶼と本州間での遺伝的分化と核果サイズ変異との関係を調査した。その結果、島嶼ではオニグルミの核果サイズが多様で、本州集団と比較すると小型だった。一方で島嶼と本州のオニグルミは遺伝的に分化しておらず、核果サイズ変異と遺伝的変異との関係は確認できなかった。また、野外にセンサーカメラを設置しヒメネズミがオニグルミ核果を持ち去るかどうかを撮影したところ、粟島では持ち去りが確認されたが、佐渡島では確認できなかった。
著者
廣田 峻 井尻 航太朗 藤本 博文
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.151-158, 2016

香川県丸亀市において、2001?2003年、2011年にミナミメダカの分布調査を行い、ミナミメダカの分布と土地利用の関係を検証した。2回の調査の間に、田から建物用地への転用が進んだものの、ミナミメダカの分布が確認された地点は増加した。土地利用と水系、ため池との距離、標高・傾斜を環境要因として、ミナミメダカの分布確率を推定する多変量解析を行った。その結果、調査地点から半径100 m土地利用がミナミメダカの分布確率を推定する上で最も当てはまりが良かった。土地利用のうち、河川・ため池面積が生息確率に負の、田と建物用地面積が正の影響を持つことが示された。この結果は、ため池とその周辺がミナミメダカの生息に不適当になっている一方で、田と住宅地の境界域が有用な生息地として機能している可能性を示唆するものである。
著者
坂本 亮太 廣田 峻
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.137-145, 2015-10-14 (Released:2017-03-25)

本研究は,19世紀後半に日本国内に帰化したと考えられている,コマツヨイグサOenothera laciniataの繁殖生態を明らかにする.福岡,岐阜の2地点における7種類の袋がけ処理の結果,処理区間のいかなる組み合わせでも,果実あたりの種子生産数に有意な差異は検出されず,コマツヨイグサは開花前の自動同花受粉によって,外交配花粉に頼らずとも種子を生産できることが明らかとなった.これらの結果は,原産地である北米での研究報告と矛盾せず,日本国内においても,開花前の自動同花受粉と同時に,Permanent Translocation Heterozygotes(PTH)と呼ばれる繁殖様式を維持していることが強く示唆された.PTHは受粉を必要とするものの,クローン種子を同花花粉で作るため,繁殖相手が少ない帰化先において分布を拡大できた大きな要因であると考えられた.コマツヨイグサは現在までに,環境省の要注意外来生物種に指定され,日本各地で定着防除策がとられている.PTHのような侵入に適した形質の認識不足は,防除対策の課題となり得るため,今後の更なる周知および新たな調査が必要である.