著者
陶山 佳久
出版者
森林遺伝育種学会
雑誌
森林遺伝育種 (ISSN:21873453)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.85-89, 2019-04-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
13
著者
陶山 佳久 鈴木 準一郎 蒔田 明史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.97-106, 2010-03-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
27
被引用文献数
2

近年のDNA分析技術の発展を背景としたジェネット識別データ等の蓄積により、タケ・ササ類の一斉開花に関する新たな視点が加わり、関連する議論を整理する必要があると考えられた。そこで本稿では、タケ・ササ類の一斉開花に関して、いくつかの用語の定義と仮説の提唱を行った。まず一斉開花の概念を整理し、開花の個体性と規模を明確に分けて表現することとし、「同調開花」、「単独開花」、「広域開花」および「小規模開花」という用語の使用を提唱した。次に、ジェネット混在型の空間分布構造が、タケ・ササ類の一斉開花性を強化する要因の一つになりうることを指摘し、「ジェネット混在型競争回避仮説」として提唱した。また、典型的な一回繁殖・一斉開花性には合致しない現象として「再開花」、「開花後生残稈」、「再生稈」、「小規模開花」、「一斉前小規模開花」および「一斉後小規模開花」に注目し、これらが一回繁殖・一斉開花性のリスク回避(保険)システムとして機能しうることを指摘した。最後に、個体群内に生じる可能性のある長周期開花性の突然変異は、長寿命クローナル植物のジェネット混在型高密度優占個体群において固定されやすいことを説明し、長期待機型一斉開花性の進化メカニズムの一つとして考えられることを提案した。
著者
岩崎 貴也 阪口 翔太 横山 良太 高見 泰興 大澤 剛士 池田 紘士 陶山 佳久
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.183-199, 2014-11-30

生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
著者
沼野 直人 陶山 佳久 Naoto NUMANO Yoshihisa SUYAMA
出版者
東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター
雑誌
複合生態フィールド教育研究センター報告 = Bulletin of Integrated Field Science Center
巻号頁・発行日
no.22, pp.31-37, 2006-12-01

樹木個体群の遺伝的多様性と空間的遺伝構造は,種子散布と花粉散布を介した遺伝子流動範囲に大きく影響される。しかしながら,これまでに森林内の優占樹種を対象として行われてきた研究では,遺伝子流動範囲をカバーする面積を対象とすることはほとんどなかった。そこで本研究では,伐採によって分布の連続性が低下したブナ個体群を対象として,残存するブナ成木の遺伝的多様性と空間的遺伝構造を大面積調査によって明らかにした。これによって,1)遺伝子流動範囲における詳細な遺伝構造と,2)残存ブナ個体群における遺伝的多様性と遺伝構造の現状,3)伐採等による樹木個体群の小集団化が遺伝的多様性と遺伝構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2005年及び2006年の早春,東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター内の約500haの同一河川流域内に設定した調査地内をくまなく踏査し,胸高直径15cm以上の全てのブナ成木1571本から葉の採取を行った。それらについてSSR7遺伝子座の遺伝子型を決定し,遺伝的多様性と空間的遺伝構造について解析を行った。その結果,残存ブナ個体群においては,分集団間レベルでは遺伝的に有意な集団の分化は起きていないが,個体間レベルでは約90m未満の範囲に遺伝的に類似した個体が生育していることが明らかとなった。また,残存個体群において遺伝的多様性が低下している傾向は認められず,近親交配が過剰に起きている傾向も認められなかった。さらに,小集団化後に更新したと考えられる成木であっても,遺伝的多様性の低下や遺伝的な集団の分化の傾向は認められなかった。これらの結果は,ブナの遺伝子流動の特徴である近距離の旺盛な種子・花粉散布と,量的には少ないが種子生産に効果的に働く長距離花粉散布を反映したものであると考えられた。
著者
岩崎 貴也 阪口 翔太 横山 良太 高見 泰興 大澤 剛士 池田 紘士 陶山 佳久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.183-199, 2014-11-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
97
被引用文献数
1

生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
著者
片山 瑠衣 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.277, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

日本に自生するヤブツバキ(Camellia japonica)とユキツバキ(C. rusticana)は、ツバキ属ツバキ節(sect. Camellia)に属する。ヤブツバキは赤く大きな花弁を持つ鳥媒介植物であり、ユキツバキの花弁色や大きさは同様に鳥媒シンドロームに属するものである。しかし、先行研究によると、ユキツバキは昆虫が主要な花粉媒介者であることが報告されている。また、これらの在来種と比較して、アジア大陸に自生するツバキ属は、色や大きさにおいて、より多様な花形態を示す。これらの背景から、ツバキ節における系統解析は、花の進化過程の解明に大きく貢献できると考えられる。そこで本研究では、選択圧が大きく影響すると考えられる花形態に着目し、花形態の比較およびMIG-seq法を用いた分子系統解析を行うことで、日本産ツバキ節の種分化の要因と系統的な位置づけを探ることを目的とした。花形態の比較では、東アジアから東南アジアにかけて自生するCamellia属のうち、27種を対象に各3花ずつ採取して花形態の測定および解析を行った。その結果、花形態は節ごとに異なった傾向を示した。この結果をMIG-seqを用いた分子系統解析と合わせて考察する予定である。
著者
小林 郁奈 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.425, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

堅い殻に包まれたオニグルミ種子は、一般にアカネズミには採食されるが、より小型のヒメネズミには採食されない。しかし、アカネズミの分布しない新潟県粟島ではオニグルミ種子がヒメネズミに採食されると言われている(林ら、私信)。私たちの予備的観察では、佐渡島や粟島で小型のオニグルミ核果が多く観察されたため、オニグルミとヒメネズミの共進化が起こっているのではないかと予測した。そこで本研究では、島嶼3集団(粟島、佐渡島、金華山)および本州の7集団でオニグルミ核果を採取してサイズを計測し、さらに各集団から採取したオニグルミ計80個体を対象として、MIG-seq法を用いた集団遺伝学的解析を行うことで、島嶼と本州間での遺伝的分化と核果サイズ変異との関係を調査した。その結果、島嶼ではオニグルミの核果サイズが多様で、本州集団と比較すると小型だった。一方で島嶼と本州のオニグルミは遺伝的に分化しておらず、核果サイズ変異と遺伝的変異との関係は確認できなかった。また、野外にセンサーカメラを設置しヒメネズミがオニグルミ核果を持ち去るかどうかを撮影したところ、粟島では持ち去りが確認されたが、佐渡島では確認できなかった。
著者
陶山 佳久 中澤 文男 牧野 能士 松木 悠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

山岳氷河から得られた雪氷試料中に存在する花粉のDNA分析によって、過去に分布した樹木の遺伝的情報を直接取得し、樹木個体群の分布変遷史を時空間的に明らかにしようとする研究のための基礎技術開発を行った。まず、花粉一粒ずつに含まれるゲノムDNAを全ゲノム増幅法によって増幅して、ゲノム内の複数領域のDNA分析に用いるための技術を完成させた。また、次世代シーケンサーを用いてゲノム全体から網羅的に塩基配列を得る新たな手法を開発し、MIG-seq法として発表した。これらの技術を氷河から得られた花粉の分析に応用した。
著者
陶山 佳久 中村 徹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.510-517, 1988-12-01
被引用文献数
6

アカマツ林の遷移に関する基礎的情報を得ることを目的として, 林内相対照度の違う3林分内(7,15,27%)に発生したアカマツ当年生実生の発生, 発育, 死亡過程を調査した。発生は4月下旬に始まり, 2〜3週間後には発生頻度がピークに達し, 7月下旬には終了した。年間総発生本数は54,100〜99,400本/haに達した。林床の相対照度が低い2調査区では9月下旬までに全個体が死亡し, 相対照度が最も高い調査区では21%が冬期まで生存した。死亡要因はおもに動物害, 苗立枯病害, 乾燥害および被陰によるものであった。林内のアカマツ実生は被陰により発育を妨げられ, 発育初期段階で死亡する割合が大きく, 動物害と苗立枯病害は, 実生が初生葉を展開するまでに発生する重大な死亡要因であった。一方, 乾燥害によって死亡したとみなされた個体数は少なかった。
著者
日浦 勉 陶山 佳久 彦坂 幸毅 熊谷 朝臣 内海 泰弘 陶山 佳久 彦坂 幸毅 熊谷 朝臣 内海 泰弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本列島に広く分布するブナは光合成窒素利用効率、窒素生産力、窒素滞留時間、夏場の蒸散速度、水利用効率、リター分解速度、摂食機能群ごとの葉の食害度など様々な機能的性質に地理的な変異を持つことが明らかとなった。これらの形質は遺伝的にも固定されていると考えられることから、現在のブナ林生態系は環境変動に対してある程度可塑的に応答するものの、温暖化など急速な変化に対しては脆弱な側面もあると考えられた。
著者
陶山 佳久 中澤 文男 PARDUCCI Laura BENNET Keith D.
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

湖底堆積物や山岳氷河に含まれる古代花粉試料のDNA分析により、花粉試料の種識別や種内系統に関する情報を取得する研究を行った。湖底堆積花粉のDNA分析では、スカンジナビア半島の北方針葉樹が最終氷期から生き残っていたことを明らかにした。また、花粉分析法と堆積物DNA分析による古植生解析の比較を行った。山岳氷河から得られた花粉のDNA分析では、形態からは同定できない節レベルの識別に成功した。これらの成果は、堆積花粉のDNA分析による過去の植物の遺伝情報取得法として新たな提案となる。