著者
小林 隆弘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.271-282, 2007-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
61
被引用文献数
3

大気環境中のナノ粒子に曝露される可能性がある。ラッシュアワーのとき道路沿いの大気中では自動車由来と思われるナノ粒子が増加することが観察される。ディーゼルエンジンは多数のナノ粒子を排出する。一方, 極めて粒子径が小さいことから, ナノ粒子は化学的, 電気的あるいは光学的な新たな物性を持ち, 外界からの光や熱や電圧等の刺激に対して大きい粒子に比較し異なる挙動を示す。このようなことから工業的に生産されるナノ粒子は化学, 電子工業, 化粧品, 医薬, 食品, 環境技術といったあらゆる分野で使われるようになりつつある。作業環境中においてもこれらのナノ粒子に曝露される可能性が増加しつつある。しかしながら, 大気および作業環境中のナノ粒子の曝露評価や健康影響評価はあまり行われていないのが現状である。ここではナノ粒子の曝露評価や健康影響評価の現状と課題について概観した。曝露評価については, 屋内・屋外ならびに作業環境中での曝露に関する知見の充実や毒性やナノ材料のライフサイクルを考えた曝露指標の選択とそれに基づく曝露量の計測手法の開発が課題である。また, 健康影響評価においては粒子の物理・化学的性状に基づいた体内動態や毒性評価や評価に必要な曝露手法の開発が課題となる。
著者
市原 学 小林 隆弘 藤谷 雄二 尾村 誠一 市原 佐保子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

ナノテクノロジーは,並行して発展してきた分子生物学との融合を通じ新しい学術分野と革新的な技術を生み出すことが期待されている。ナノテクノロジー全体の中で,工業ナノマテリアルはその第一段階を形成するものである。一方,工業ナノマテリアルの健康,環境への影響,安全性についての研究は十分とは言えない。なかでもヒト健康へのリスク評価は優先順位の高い課題である。暴露評価はハザード評価と統合され,リスクを評価するために用いられる。工業ナノマテリアルに暴露された労働者を対象とした疫学コホート研究を立ち上げる構想が国際的にも議論されているが,その基盤としても暴露評価は重要な課題となっている。暴露評価におけるナノマテリアルに特異的な問題の一つは用量計測基準として何を選ぶかということである。この問題に関して国際的なコンセンサスはまだ得られていない。ナノマテリアルの個数,表面積が生体分子との反応性に貢献していると考えられていることから,従来の重量濃度に基づく計測基準が,ナノマテリアルの暴露を定義する上で十分かどうか疑問がある。走査式モビリティーパーティクルサイザー(SMPS)によりナノ領域を含む粒子を分級し連続的にモニターすることが可能であるが,高価で可動性に問題があり,労働現場でより簡易にナノ粒子を測定する機器の開発の必要性が唱えられてきた。米国国立労働安全衛生研究所は凝集粒子カウンター(CPC)と光散乱粒子計測装置(OPC)の併用を提案している。また,比較的安価で小型化されたSMPS,あるいは新しい小型計測機器も開発されている。長期の累積的な暴露の評価には多くの困難が伴う場合があることも指摘しなければならない。生体試料を用いた内部暴露評価のためにバイオロジカルモニタリング法の開発も求められ,そのためには様々な分野の研究者の共同が必要である。
著者
小林 隆弘
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.271-282, 2007-09-10
被引用文献数
2

大気環境中のナノ粒子に曝露される可能性がある。ラッシュアワーのとき道路沿いの大気中では自動車由来と思われるナノ粒子が増加することが観察される。ディーゼルエンジンは多数のナノ粒子を排出する。一方,極めて粒子径が小さいことから,ナノ粒子は化学的,電気的あるいは光学的な新たな物性を持ち,外界からの光や熱や電圧等の刺激に対して大きい粒子に比較し異なる挙動を示す。このようなことから工業的に生産されるナノ粒子は化学,電子工業,化粧品,医薬,食品,環境技術といったあらゆる分野で使われるようになりつつある。作業環境中においてもこれらのナノ粒子に曝露される可能性が増加しつつある。しかしながら,大気および作業環境中のナノ粒子の曝露評価や健康影響評価はあまり行われていないのが現状である。ここではナノ粒子の曝露評価や健康影響評価の現状と課題について概観した。曝露評価については,屋内・屋外ならびに作業環境中での曝露に関する知見の充実や毒性やナノ材料のライフサイクルを考えた曝露指標の選択とそれに基づく曝露量の計測手法の開発が課題である。また,健康影響評価においては粒子の物理・化学的性状に基づいた体内動態や毒性評価や評価に必要な曝露手法の開発が課題となる。