著者
松本 吉史 小柏 靖直 甲能 直幸
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.184-190, 2014-03-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

日本人の結核罹患率は人口10万人対21.0 (2010年) であり, 先進国と比較すると高く, 結核の中等度蔓延国といえる. また, 全結核症中における頸部リンパ節結核などの肺外結核症の比率は上昇傾向にある. 耳鼻咽喉科領域の結核症, 特に頸部リンパ節結核は肺外結核の中で胸膜炎の次に多い. 耳鼻咽喉科医が肺外結核症を診断する機会は決してまれではなく, 多彩な臨床像を呈することから診断に苦慮することも多い. そこで今回われわれは, 当科で経験した頸部リンパ節結核9例について, 診断に至るまでの臨床経過を詳細に検討し文献的な考察を加えた. 頸部リンパ節結核の9例の画像所見では膿瘍型が5例, 腫脹型が4例で認められた. クオンティフェロンを施行した4例に関しては全例で陽性であった. 9例中8例に穿刺吸引細胞診が施行され, 半数の4例に類上皮細胞がみられた. 結核症は多彩な臨床像を呈することがあるため, 非定型的な所見をみた場合にはまず本症を疑うことが重要である. 周囲への感染拡大を防止する観点から, 胃液や喀痰の培養検査やPCR, クオンティフェロン検査により周囲への拡散のリスクを十分に評価した上で超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診を行い, 診断に難渋する場合にはリンパ節の開放生検を考慮することが重要である.
著者
小柏 靖直 甲能 直幸
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.97-101, 2013 (Released:2013-07-03)
参考文献数
30

頭頸部癌の治療の現状と展望について概説する。放射線化学療法の新しいレジメンの開発により進行癌においても喉頭温存が可能になってきた。また,分子標的薬もいよいよ昨年末より頭頸部癌に対して保険適応となり,今後ますます予後やQOLを改善し得る治療が開発される可能性が高くなってきた。手術治療においてはセンチネルリンパ節生検術が取り入れられてリンパ節転移をできるだけ早い段階で正確に診断可能となりつつある。経口的咽喉頭切除などの新しい取り組みも出現してきた結果,血管吻合などの再建を要する大きな手術を行わなくても進行癌に対応できる可能性が出てきている。今後の頭頸部癌治療においては,他領域同様に危険因子や発癌因子により治療を細分化する取り組みがなされていくものと予想される。