著者
大久津 昌治 小柳 深
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.362-367, 1991

ddY系マウスの8細胞期胚から得た単一割球および2~8個の単一割球から作製した集合胚の発生能を検討した.培養開始後単一割球が桑実期に発生する時間は,2個集合胚よりも長かったが,胞胚腔を形成する時間は2個集合胚と差がみられなかった.一方,各集合胚では,集合に用いた割球数が多い胚ほど桑実期への発生は遅れたが,初期胚盤胞期に発生する時間は,2個集合胚を除き透明帯を除去した胚とほとんど同じであった,各集合胚の体積の増加率は,集合に用いた割球数が少ない胚ほど小さくなる傾向がみられた.胚盤胞期における集合胚の栄養芽細胞と内細胞塊の細胞数は,集合時の割球数の少ない胚ほど少なく,単一割球から発生した胞状の胚では,内細胞塊は全く認められなかった.桑実期あるいは初期胚盤胞期の胚をレシピエントに移植し,妊娠19日目に剖検した結果,単一割球由来の胚はすべて着床しなかったが,2個以上の単一割球を集合した胚からは生存胎児が得られた.これらのことから,マウス8細胞期胚の単一割球は胎児への発生能をもたないが,4細胞期胚の単一割球は胎児にまで発生する可能性のあることが示唆された.
著者
小柳 深 柳田 信也
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.31-35, 2004-04-01
参考文献数
24
被引用文献数
3

ポリビニルアルコール(PVA)がマウス初期胚の発生に及ぼす影響を検討した。その結果、0.1mg/mlおよび1.0mg/ml PVA添加培地において牛血清アルブミン(BSA)添加培地と同様マウス初期胚は高率に拡張胚盤胞に発生した。しかし、10.0mg/ml PVA添加培地では、胚盤胞への発生はみられなかった。したがって、PVAは適当な濃度であれば、1細胞期胚の拡張胚盤胞までの発生を支持することが明らかとなり、PVA添加培地は限定培地としてマウス胚の培養に用いることが可能であると考えられる。さらに、本研究ではPVA添加培地を用いて1細胞期、2細胞期、8細胞期および初期胚盤胞のどのステージから培養を開始しても拡張胚盤胞への発生率および拡張胚盤胞期までの各ステージへの発生速度は、BSA培地のものと同じであった。これらのことはPVA培地で各胚は正常な発生過程を経て拡張胚盤胞にまで発生することを示し、PVAは拡張胚盤胞期までの各過程にそれぞれ有効に作用するものと推察される。しかしながら、1細胞期から初期胚盤胞のどのステージから培養を開始しても、脱出中および脱出胚盤胞に発生する割合はBSA添加培地にに比べて減少した。In viroにおける胚盤胞の透明帯脱出には蛋白質分解酵素が関与していると考えられているので、胚盤胞の低い透明帯脱出率は蛋白質分解酵素の生成・分泌能の低下に起因している可能性が考えられる。