著者
小栁 真二
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.303-318, 2018-12-30 (Released:2019-12-30)
参考文献数
19

札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市は,三大都市圏に次ぐ居住・経済・政治の機能集積を有し,地方ブロックの中心的地位にある地方中枢都市として,しばしば一括して扱われてきた.しかしながら近年の社会・経済指標によれば,福岡市は他の3市と比べて顕著な集積を示し,この群から抜け出しつつある.     本稿ではまず,福岡市の成長が顕著な人口について,その主な増加要因である国内の人口移動に着目して分析した.福岡市における就職期の転入超過は4市のなかで最も大きく,就職期に大きい東京圏への転出超過が縮小傾向にある.このような人口移動を支える要因として,所得機会の存在に加え,居住地としての魅力の高さが重要と考えられる.     支店経済と並び福岡市の経済的中心性を特徴づけてきた商業機能については,九州新幹線博多~鹿児島中央間全線開業を契機に大型商業施設の出店が続いているにもかかわらず,その広域中心性は低下している可能性がある.代わりに,近年顕著な伸びを示しているのがMICEや訪日外国人の受け入れなど集客機能であり,市経済の新たな牽引役となることが期待されている.     さらに,支店経済からの脱却を目標に,福岡市ではスタートアップ企業の支援に力を入れている.ただし,取り組みは端緒についたばかりであり,将来の市経済の牽引役となる企業が現れるか,また規模拡大時にも福岡市に立地し続けるかは,現時点では未知数である.
著者
小栁 真二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.473-489, 2011-09-01 (Released:2015-10-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

本稿の目的は,日本における大学発ベンチャー企業の立地動態を明らかにすることである.筆者は,全国規模でのアンケート調査を独自に実施するとともに,母体機関との関係のあり方,および事業の性質という二つの基準によって大学発ベンチャー企業を4類型に区分した.この類型区分に基づいて,設立時点と調査時点の立地を比較し,立地行動とその要因を分析した.結果として,母体機関との関係が強い企業は,事業の性質にかかわらず母体機関との近接性を重視して地方圏にも立地し続け,事業拡大に際しても支所配置により母体機関への近接性を保ちながら市場へのアクセスを確保していることが明らかになった.一方で,母体機関との関係が弱い企業は,近接性を重視せず,事業の性質によっては大都市を指向して移転を行う傾向が確認された.これらの知見は,大学発ベンチャー企業の立地行動を母体機関との近接性だけで特徴づける既往の研究に異論を呈するものである.
著者
小栁 真二
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.303-318, 2018

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市は,三大都市圏に次ぐ居住・経済・政治の機能集積を有し,地方ブロックの中心的地位にある地方中枢都市として,しばしば一括して扱われてきた.しかしながら近年の社会・経済指標によれば,福岡市は他の3市と比べて顕著な集積を示し,この群から抜け出しつつある. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿ではまず,福岡市の成長が顕著な人口について,その主な増加要因である国内の人口移動に着目して分析した.福岡市における就職期の転入超過は4市のなかで最も大きく,就職期に大きい東京圏への転出超過が縮小傾向にある.このような人口移動を支える要因として,所得機会の存在に加え,居住地としての魅力の高さが重要と考えられる. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;支店経済と並び福岡市の経済的中心性を特徴づけてきた商業機能については,九州新幹線博多~鹿児島中央間全線開業を契機に大型商業施設の出店が続いているにもかかわらず,その広域中心性は低下している可能性がある.代わりに,近年顕著な伸びを示しているのがMICEや訪日外国人の受け入れなど集客機能であり,市経済の新たな牽引役となることが期待されている. <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;さらに,支店経済からの脱却を目標に,福岡市ではスタートアップ企業の支援に力を入れている.ただし,取り組みは端緒についたばかりであり,将来の市経済の牽引役となる企業が現れるか,また規模拡大時にも福岡市に立地し続けるかは,現時点では未知数である.</p>