著者
小森 昌史 小豆川 勝見 野川 憲夫 松尾 基之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.475-483, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
31
被引用文献数
18 57

福島第一原子力発電所事故によって環境中に降り積もった放射性核種が,地点ごとに原子炉1~3号機の中でどの放出源の寄与によるものであるかを134Cs/137Cs放射能比(以下放射能比)を指標として調べた.事故によって放出された134Csと137Csの放射能比はおよそ1 : 1であるが,細かく見ると原子炉ごとに比が異なるために環境試料中で放射能比のばらつきが生じており,その比が汚染源ごとの寄与の大きさを表す指標になると考えられる.そこで本研究では東日本の広域で土壌・植物片を採取してγ線測定を行い,各地点における放射能比を算出した.また東京電力が公開している原子炉建屋やタービン建屋の汚染水の放射能から,各原子炉における134Cs/137Cs放出放射能比を算出し,環境試料中の放射能比と比較した.その結果,最初に放射性核種を放出した1号機の放射能比と,最初に汚染が起こったとされる宮城県牡鹿半島の試料における放射能比がともに0.91程度と他原子炉・他地点と比較して低い値であることがわかり,同地点の汚染は1号機由来が強いことが実試料からも示唆された.また他地点でも放射能比を算出し,原子炉各号機由来の汚染の程度を見積もった.
著者
小豆川 勝見 小森 昌史 野川 憲夫 松尾 基之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.66, 2011 (Released:2011-09-01)

2011年3月に発生した東日本大震災によって福島第一原子力発電所から放出された放射性核種の広域的な分布を得るために、原発正門前をはじめ福島県から静岡県にかけての広範囲で土壌を採取し、ゲルマニウム半導体検出器を用いてガンマ線の測定を行った。ガンマ線スペクトルから同定された核種は合計15種類であり、核種によって分布の傾向に差が生じていることを確認した。例えば134/137Csは一様に拡散するが、131Iでは原発周辺で特に線量が高い。このように核種によって拡散の挙動が異なり、SPEEDIの予測とも必ずしも一致しない核種があることが明らかとなった。