著者
大山 紘平 小沢 和彦 清水 沙友里 黒木 淳
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.35-57, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
42

本稿の目的は,地方公共団体において組織変革としてのデータ活用推進に対する職員の行動意識の実態とその要因を明らかにすることである。具体的には,組織変革へのコミットメント尺度の原著者であるHerscovitch and Meyer (2002)から承諾を得て日本語版を開発し,その信頼性と妥当性の検証を行う中で,データ活用に対する職員の行動意識の実態と課題を明らかにする。本稿は,データ活用やEBPMが最も進んでいると考えられる健康・福祉・医療政策および総合的に政策を取り扱う部署を対象として,調査を実施した。 検証の結果,開発した尺度は,概ね想定された構成概念妥当性が確認された。さらに,分析の結果,情緒的,存続的,規範的の3 つの尺度のうち,情緒的あるいは規範的なコミットメントが高まれば,データ活用に対する行動意識が高まることが示唆された。本稿で得られた結果は,データ活用推進への行動意識に対して,組織変革における職員の心的状態,あるいはマインドセットが極めて重要な意味を持つことを示唆している。わが国の地方公共団体では専門家ではない職員がデータ活用に基づく業務プロセスの変更を含む組織変革を担う可能性が高く,本稿の結果はデータ活用推進へのコミットメントの程度が組織変革に影響をもたらす可能性を示唆している。