著者
小泉 京美
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.17-32, 2015

<p>記号活字やリノカットを駆使して視覚性を強調した萩原恭次郎の『死刑宣告』(長隆舎、一九二五年)は、これまで詩的言語の言語(symbol)から図像(icon)への移行を示す記念碑的詩集として捉えられてきた。だが、表現規範の革新を目指す前衛的な芸術運動を後押しした関東大震災という出来事に密着して考えるならば、『死刑宣告』は表象の秩序を根柢から揺るがす、より本質的な言語の変容を記録していたことが見えてくる。震災による活字不足と新聞紙面の混乱、震災を契機に普及した素材リノリウムとリノカットという表現手法、これらを取り巻く文化史的な背景を検証することで、その表現の独自性と詩の新たな読解可能性を開示する。</p>
著者
小泉 京美
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.17-32, 2015 (Released:2016-08-02)

記号活字やリノカットを駆使して視覚性を強調した萩原恭次郎の『死刑宣告』(長隆舎、一九二五年)は、これまで詩的言語の言語(symbol)から図像(icon)への移行を示す記念碑的詩集として捉えられてきた。だが、表現規範の革新を目指す前衛的な芸術運動を後押しした関東大震災という出来事に密着して考えるならば、『死刑宣告』は表象の秩序を根柢から揺るがす、より本質的な言語の変容を記録していたことが見えてくる。震災による活字不足と新聞紙面の混乱、震災を契機に普及した素材リノリウムとリノカットという表現手法、これらを取り巻く文化史的な背景を検証することで、その表現の独自性と詩の新たな読解可能性を開示する。
著者
小泉 京美
出版者
東洋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

「満洲国」および「関東州」における日本語文学・文化関連資料の調査成果を、コレクション・モダン都市文化第5期第85巻『満洲のモダニズム』(ゆまに書房、2013年6月)に発表し、日本および満洲におけるモダニズムの展開について論じた。また、『アジア遊学』167 (2013年8月)の特集「戦間期東アジアの日本語文学」に、「まなざしの地政学―大連のシュルレアリスムと満洲アヴアンガルド芸術家クラブ―」を発表し、満洲事変以降の大連の地政学的条件と、絵画・写真・詩など多様なジャンルを横断して展開したシュルレアリスムについて論じた。さらに、国際シンポジウム「文化における異郷」(2013年11月16日、輔仁大学、台湾)に参加し、「故郷喪失の季節―満洲郷土化運動と満洲歳時記―」と題して口頭発表を行った。1930年代に南満洲鉄道株式会社の社員会で活発化した満洲郷土化運動と、満洲における日本語文学の展開との関わりにっいて論じたもので、満洲におけるインフラ整備とメディア開発の進展が、日本語文学の展開に果たした役割を検証するとともに、満洲の日本人社会の変容が、日本語文学に与えた影響について考察した。口頭発表の成果は、「満洲郷土化運動と〈日本文学〉―短歌・俳句・歳時記―」(『東洋通信』、第50巻第9号、2013年12月)及び「故郷喪失の季節―満洲郷土化運動と金丸精哉〈満洲歳時記〉の錯時性―」(『フェンスレス』第2号、2014年刊行予定)に発表した。