著者
小泉 直介 進士 五十八
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.23-32, 2007-06-20

本研究の目的は,我が国造園建設業が継承し,また継承すべき伝統的作庭技術,工法などの造園的本質と特質を明らかにしようとするものである。(1) 飛鳥時代にはじまる作庭をみると,身近に庭をつくるために在所の地勢を活かし,資材に"自然材料・地場材料"を使い,そして作る方法は"自然に順応した工法"をとった。この規範は,近世に至るまで,造られたかたちは変わっても,つくる過程の態様として大きな変化はなかった。(2) 職能分担などの業務形態の発展は,建築土木に比べて仕事の量は劣ったにも拘らず,社会経済の変化につれてこれ等と同様な軌跡を辿った。江戸時代には,植木,石などの資材の販売業が萌芽した。しかし,造園職能のうち現場で直接土に触れる職人の存在は,社会的に認知されることが希薄であった。(3) 作庭の出来を左右する作業者の心象は,素朴にして巧まざる自然の美しさを映そうとする行為を生むものであった。これらのことから現代の造園建設が,伝統として継承すべき根幹的な事項を明らかにした。