著者
佐々木 嘉光 影山 昌利 吉村 由加里 松浦 康治郎 土屋 愛美 小澤 太貴 松本 博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cc0376, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 体外衝撃波療法(ESWT)は、1988年にドイツで初めて偽関節に対する治療が行われてから、1990年代には石灰沈着性腱板炎、上腕骨外上顆炎、足底筋膜炎などの難治性腱付着部症に対する除痛治療として、欧州を中心に整形外科分野で普及してきた。その後2000年に米国 FDA で ESWT が認可され、本邦では難治性足底筋膜炎を適応症として2008年に厚生労働省の認可がおりて臨床使用が可能となり、当院では2011年10月に国内9台目となる整形外科用体外衝撃波疼痛治療装置を設置した。今回当院において体外衝撃波疼痛治療装置設置後に部位の異なる4例の ESWT を経験したので、疼痛に対する即時効果を中心に報告する。【方法】 体外衝撃波疼痛治療装置は、本邦で認可されているドルニエ社製 Epos Ultra を使用した。本装置は電磁誘導方式で照射エネルギー流速密度は0.03~0.36 mj/mm2 と7段階に可変式である。照射方法は基本的に超音波ガイド下に正確に病変部(腱付着部)への照射を行う。Low energy より始めて徐々に出力を上げ、痛みの耐えられる最大エネルギーで照射を行う。当院における ESWT の照射は、整形外科医師の指示と指導のもと、業者による機器の取り扱いの説明を受けた理学療法士が実施している。<症例>症例1は49歳女性で、4年前に右アキレス腱断裂に対して保存的治療を実施している。現在はソフトバレーをしており、2か月ほど前から鈍痛が出現した。鈍痛は以前から時々生じることがあった。ESWT は照射レベル3、総衝撃波数5000発、総照射エネルギー396 mj/mm2 で実施した。症例2は49歳女性で診断名は右足底筋膜炎であった。半年前にジョギングを始め、5日ほど前から足底部の疼痛が出現した。ESWT は照射レベル7、総衝撃波数2970発、総照射エネルギー1000 mj/mm2 で実施した。症例3は75歳男性。診断名は右上腕二頭筋腱炎で、照射の6か月前に右肩を打撲。当院整形外科で保存的治療を実施し、疼痛は改善したものの、4割ほど残存していた。ESWT は照射レベル7、総衝撃波数2486発、総照射エネルギー800 mj/mm2 で実施した。症例4は14歳女性で剣道部に所属している。以前より左手関節の疼痛があって照射の2か月前に当院を受診し、三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷と診断された。ギプス固定による保存的治療を実施後、3日前に矯正装具が完成して装具下に稽古の再開が許可されている。ESWT は照射レベル2、総衝撃波数5000発、総照射エネルギー300 mj/mm2 で実施した。疼痛の評価は、照射前と照射後に Visual Analogue Scale (VAS)を用いて行った。また再評価が可能であった症例については翌日と1週後に再評価を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 ESWT 実施前に治療効果と副作用について説明し、本人の同意を得て実施した。報告にあたっては口頭および書面で説明し、本人と家族の同意を得た。【結果】 症例1(アキレス腱断裂後)の歩行時痛 VAS は、治療前58 mm、治療後44 mm、翌日7 mm 、1週間後5 mm で、最大(1週間後)53 mm 改善した。症例2(足底筋膜炎)の歩行時痛 VAS は、治療前46 mm、治療後0 mm、1週間後30 mm で、最大(治療後)46 mm 改善した。症例3(上腕二頭筋腱炎)の圧痛 VAS は、治療前29 mm、治療後15 mm、翌日0 mm で、最大(翌日)29 mm 改善した。症例4(TFCC損傷)の圧痛 VAS は、治療前42 mm、治療後0 mm、1週間後14 mm で、最大(治療後)42 mm 改善した。【考察】 今回、4症例に対して ESWT を実施し疼痛に対する即時効果が得られた。靭帯および筋腱付着部に対する ESWT の作用機序は、神経終末に対する変性誘導、脊髄後根神経節において疼痛にかかわる神経伝達ペプチドの減少に由来する疼痛の抑制、腱細胞や血管新生を介した組織修復効果、各種炎症サイトカイン抑制に伴う抗炎症効果などが報告されている。除痛効果持続時間は数週間におよび、時に完全寛解に改善する症例もあると報告されている。今回の4症例においても、治療直後または翌日の除痛効果が高く、3例では1週間後まで除痛効果が持続していた。Ohtori らは除痛メカニズムとしてラット足底に体外衝撃波を照射することにより、自由神経終末の破壊が起こると報告し、照射後3週間でコントロール群と差がなくなっており、この自由神経終末の破壊が初期の除痛に関与していると考えられている。今回は ESWT 照射後1週間の即時効果を報告したが、今後は症例数を増やして除痛の長期的な効果を検討するとともに、運動機能とパフォーマンスの変化を含めて治療効果の検討を行っていきたい。【理学療法学研究としての意義】 本邦の理学療法分野において ESWT に関する報告はない。運動器に対する超音波画像診断の理学療法と合わせて、ESWT は理学療法領域における新たな物理療法機器としての多くの可能性が期待される。
著者
鈴木 健規 佐々木 嘉光 松浦 康治郎 小澤 太貴 榑林 学 高橋 正哲
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.87, 2012 (Released:2013-01-10)

整形外科領域における体外衝撃波療法(ESWT)は、1988年にドイツで初めて偽関節に対する治療が行われ、1990年代には石灰沈着性腱板炎、上腕骨外上顆炎、足底腱膜炎などの難治性腱付着部症に対する除痛治療として、欧州を中心に普及してきた。本邦では難治性足底腱膜炎を適応症として2008年に厚生労働省の認可がおりて臨床使用が可能となり、当院では2011年10月に国内9台目となる整形外科用体外衝撃波疼痛治療装置を設置した。今回、足底腱膜炎に対しESWTを実施した症例を経験したので報告する。【方法】 〈体外衝撃波疼痛治療装置の概要〉 体外衝撃波疼痛治療装置は、ドルニエ社製Epos Ultraを使用した。電磁誘導方式で照射エネルギー流速密度は0.03~0.36 mj/㎜2と7段階に可変式である。照射方法は基本的に超音波ガイド下に正確に病変部(腱付着部)への照射を行う。Low energyより始めて徐々に出力を上げ、痛みの耐えられる最大エネルギーで照射を行う。当院では整形外科医師と理学療法士がチームとなり、Visual analogue scale(VAS)を、照射前、照射直後に測定した。〈症例〉 58歳男性、運動は週3回行っており、平成23年1月にジョギング中に右足底に疼痛出現。同年6月に100キロマラソンに2度出場した結果、疼痛増悪。近医受診し、右足底腱膜炎と診断され、ステロイド注射等の保存的治療を受けた。また、接骨院へも通院したが改善せず、同年11月ESWT希望し当院受診。平成24年3月までに5回実施した。自己管理型質問票により疼痛と活動制限レベルを4段階で示したRoles and Mausdley score(以下RM score)では、最も低い活動レベルのPoorであった。1回目を照射レベル3、総衝撃波数5,000発、総照射エネルギー396mj/㎜2で実施した。2回目以降、総衝撃波数を5,000発、総照射エネルギーを1,300mj/㎜2までとし、2回目を照射レベル5で実施。3~5回目を照射レベル6で実施した。【説明と同意】 ESWT実施前に期待される治療効果と副作用の報告について口頭および書面を用いて説明し、本人の同意を得た。【結果】 歩行時VASは、照射1回目の治療前42㎜、治療後26㎜。2回目は治療前10㎜、治療後9㎜。3回目は治療前10㎜、治療後4㎜、4回目は治療前10㎜、治療後2㎜、5回目は治療前0㎜であった。朝の1歩目のVASは1回目聴取できず、2回目17㎜、3回目10㎜、5回目14㎜であった。また、3回目以降では連続歩行可能となった。4回目以降は15㎞程度のランニングが可能となっている。最終的なRM scoreはGood(時折不快感)であった。【考察】 先行研究によると、足底腱膜炎に対する除痛効果は1回照射より複数回照射の方が除痛効果は持続するとされており、本症例においても同様の結果であった。今回、RM scoreでGoodとなったが、朝の1歩目の疼痛は残存した。足底腱膜へのストレスが増大する要因として下腿三頭筋の疲労による伸張性低下もそのひとつとして考えられるとされており、ESWT実施後、下腿三頭筋のストレッチを行うことで朝の1歩目の疼痛が軽減するか否かが今後の検討課題として挙げられた。【まとめ】 足底腱膜炎に体外衝撃波を行い、ランニング可能となった。