著者
橋本 澄春 神林 ミユキ 原 靖子 小瀧 浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.230, 2009

〈緒言〉老人保健施設併設の在宅介護支援センター職員から急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)へ転職して約1年が経過し,入院期間という限られた時間内での業務遂行に大きな戸惑いを感じていた。そこで,この1年を振り返り,急性期病院の職員として組織の利益を守りながら,患者・家族ができる限り不安を感じることのない短期退院援助の方法を模索した。<br>〈方法〉1年間で介入したケース50件の平均在院日数は,当院の平均在院日数の約4倍であった。この結果から,現在のMSW としての退院援助に,まだ短縮できる部分があるのではないかと考えた。日報やケース記録から,ケースごとに依頼までの日数,依頼から初回面接までの日数など援助過程を細分化し,それぞれの期間におけるMSWの援助内容が妥当であったかを確認した。<br>〈結果〉専門職として学んだケースワーク過程を展開し,社会資源の利用準備を行う援助過程の中に省ける部分はないため,退院援助をおける時間短縮することは難しい。しかし,地域における急性期病院の役割を果たすためには,スピーディーな退院援助はMSW の絶対的な使命である。そこで援助過程の短縮ではなく,効果的に資源を利用し援助期間を短縮する方法として,短期完結を可能とする援助方法の獲得,社会資源を円滑に利用するための準備,院内スタッフとのコミュニケーションの促進が有効ではないかと考えた。入院期間という限られた時間内で,患者・家族が退院の準備をする時間を多く確保するため,MSW・地域・病院などの資源を最大限活用したい。<br>〈考察〉入職時に抱いていたMSW のイメージは,「退院」に対する病院と患者・家族とのギャップを患者側の立場で埋めていく専門職である。病院という組織が直面している課題を知ることで,そのイメージを現実にする方法が少しずつ具体的に見えてきた。専門職として,また病院の職員として,一つずつ課題を達成することが,患者の利益を守ることになると信じて,日々の業務に励んでいきたい。