- 著者
-
小田 恭平
新部 昭夫
朴 壽永
- 出版者
- 農業情報学会
- 雑誌
- 農業情報研究 (ISSN:09169482)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.86-96, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
- 参考文献数
- 16
近年,クラウドファンディングが注目されているが,農業分野におけるクラウドファンディングの活用についてはほとんど研究が行われていない.そこで本研究では,農業分野におけるクラウドファンディングの活用現状と成功要因を分析し,その活用可能性を検討した.成功要因としては,「目標額」が低いほど,また「支援者数」「最高支援額」「活動報告回数」が高いほど成功率が上がることが示されたが,先行研究で成功要因とされていた「リターン種類数」の多さは農業分野では成功要因となりえないことが確認された.活用現状としては,リターンの種類では製品系のリターンが100%採用されている一方,比較的導入しやすい承認系のリターンの採用率が45.8%と半分を下回っている.また,プロジェクトの拡散ツールとしてEメールは適していないこと,比較的拡散力の高いTwitterやInstagramなどのSNSが活用されていないことが示唆された.66.7%のプロジェクト実行者が広告効果やファンを増やすなど従来の資金調達にはないメリットをクラウドファンディングの使用目的としていた.なお,プロジェクト成功者が失敗者よりも農業分野におけるクラウドファンディングの活用を高く評価している一方で,成功者も含め今後再度クラウドファンディングを利用しようと考えている実行者が多くないことも示された.