著者
小田 恭平 新部 昭夫 朴 壽永
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.86-96, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
16

近年,クラウドファンディングが注目されているが,農業分野におけるクラウドファンディングの活用についてはほとんど研究が行われていない.そこで本研究では,農業分野におけるクラウドファンディングの活用現状と成功要因を分析し,その活用可能性を検討した.成功要因としては,「目標額」が低いほど,また「支援者数」「最高支援額」「活動報告回数」が高いほど成功率が上がることが示されたが,先行研究で成功要因とされていた「リターン種類数」の多さは農業分野では成功要因となりえないことが確認された.活用現状としては,リターンの種類では製品系のリターンが100%採用されている一方,比較的導入しやすい承認系のリターンの採用率が45.8%と半分を下回っている.また,プロジェクトの拡散ツールとしてEメールは適していないこと,比較的拡散力の高いTwitterやInstagramなどのSNSが活用されていないことが示唆された.66.7%のプロジェクト実行者が広告効果やファンを増やすなど従来の資金調達にはないメリットをクラウドファンディングの使用目的としていた.なお,プロジェクト成功者が失敗者よりも農業分野におけるクラウドファンディングの活用を高く評価している一方で,成功者も含め今後再度クラウドファンディングを利用しようと考えている実行者が多くないことも示された.
著者
植松 齊 佐藤 幹夫 久保井 榮 池田 勇治 新部 昭夫 大坪 孝之 舛水 康彦 URIU Kiyoto
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.185-192, 1997-07-31
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究は日本産及び米国カリフォルニア産のニホンナシ'二十世紀'について果実品質の比較をしたものである。果実のサンプルはカリフォルニアではフレズノ及びサクラメントより, 日本は鳥取及び長野より各々市場に流通している標準的な大きさの果実を材料とした。<BR>1. 生育期間中の気象条件について, 米国カリフォルニアの最高気温及び平均気温は日本より高かったが, カリフォルニアの最低気温は日本より低い値であった。日本の降雨量はカリフォルニアより高く, 月平均約100-150mmの値を示した。カリフォルニアは生育期間中にはほとんど降雨がみられなかった。日本の湿度はカリフォルニアより高く, 日照量についてみるとカリフォルニアは日本より高い値であった。<BR>2. 日本産とカリフォルニア産果実はほぼ標準的なサイズをサンプリングするよう努力した。日本の階級区分で, カリフォルニア産果実はL, 日本産果実は2Lクラスであった。これらのことから日本産果実は果実重, 縦径及び横径とも僅かにカリフォルニア産果実より高い値であった。D/L値 (果形指数) は日本の値が僅かに高く, 僅かに平たい果実であった。果皮色は日本及びカリフォルニアには差がみられたが, 各々の地域をみると一定の傾向はみられなかった。米国産果実の果肉硬度は日本産果実より著しく高く (フレスノ : 5.55, サクラメント : 4.98, 鳥取 : 2.21及び長野 : 3.00kg/cm<SUP>2</SUP>), で硬度が高くなると著しく搾汁率が低下する傾向がみられた。日本産果実の搾汁率は高い値を示したが, 硬度及び搾汁率に顕著な相関関係は認められなかった。<BR>3. 米国産果実のシュークロース濃度は日本産果実より著しく高い値を (フレスノ : 5.54, サクラメント : 6.42, 鳥取 : 3.05及び長野 : 2.649/m<I>l</I>) 示し, さらにソルビトールも高い値を示した。カリフォルニアの昼夜間の温度較差, 日照量, 降水量など気象条件がシュークロース及びソルビトール集積に影響したものと思われる。グルコース及びフラクトースには顕著な差は認められなかった。<BR>4. 日本産果実のクエン酸濃度は米国より高く, また逆にカリフォルニア産果実のリンゴ酸濃度は日本産果実より高い値を示した。しかし全酸濃度には差は認められなかった。