著者
前原 俊介 朴 壽永
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.109-120, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
24

本研究では,農産物や食品販売とSNS等を関連させた研究が情報化社会進展下にも関わらず少ない現状を踏まえ,SNSの重要性に着目し,事例として2019年に発生したタピオカドリンクブームの発生要因を明らかにした.具体的には,どのような消費者がブーム発生に最も貢献したか,また,その購買行動とSNS特にInstagramの影響を分析した.アンケート調査を行い,539人分のデータを収集,Brunner-Munzel検定とカイ二乗検定を適用,分析した.ツールとしてBuMocを用いた.サンプルサイズが大きいことなどからP値のみに依拠した有意差検定ではなく効果量(effect size)と併せて有意差を確認した.分析の結果,流行に敏感な女子学生が今回のブーム発生の主役であったこと.SNS特にInstagramにより情報の拡散が行われ,購買意欲向上に繋がったこと.情報の取り入れ等でInstagramは活用されるが,繰り返しタピオカドリンクを購入する要因は味や食感などのタピオカドリンク商品自体がポジティブに評価されたからであることが明らかになった.なお,今回のブームは,今後も流行に敏感な女子学生を中心とし,一定のレベルで消費対象として残存する定着性流行になる可能性が高いと推察された.
著者
朴 壽永 安江 紘幸 中尾 宏
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-13, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

多量の情報がインターネットでやり取りされるIoT(Internet of Things)の時代で,ICT(Information and Communication Technology)を利活用した実用性の高いウェブ型SWOTやTOWS分析ツールはまだ見当たらない.また,参加者以外によるアイディア発想を促す手法も確立されていない.日本の農業は,高齢化に伴う離農や耕作放棄地の増大,グローバル規模での市場開放など大きな変化に直面しており,これらの課題解決と農業振興を図る上で従来にない様々なアイディアが求められている.そこで本稿では,豊かなアイディアの発想を促すため,インターネット上でブレインストーミングやKJ法によるアイディア発想が具現できるiSWOT(internet SWOT analysis tool)を開発した.そして,アイディアとアイディアが互いに干渉して第2のアイディア発想を促すことを干渉作用と呼んでいることから,参加者による干渉を内部干渉に,プログラムによる干渉を外部干渉に分け,内部や外部干渉作用を果たす複数の機能をiSWOTに実装した.若手農業生産者と普及指導員を対象にiSWOTを用いて機能テストを行った結果,その有用性が示唆された.
著者
小田 恭平 新部 昭夫 朴 壽永
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.86-96, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
16

近年,クラウドファンディングが注目されているが,農業分野におけるクラウドファンディングの活用についてはほとんど研究が行われていない.そこで本研究では,農業分野におけるクラウドファンディングの活用現状と成功要因を分析し,その活用可能性を検討した.成功要因としては,「目標額」が低いほど,また「支援者数」「最高支援額」「活動報告回数」が高いほど成功率が上がることが示されたが,先行研究で成功要因とされていた「リターン種類数」の多さは農業分野では成功要因となりえないことが確認された.活用現状としては,リターンの種類では製品系のリターンが100%採用されている一方,比較的導入しやすい承認系のリターンの採用率が45.8%と半分を下回っている.また,プロジェクトの拡散ツールとしてEメールは適していないこと,比較的拡散力の高いTwitterやInstagramなどのSNSが活用されていないことが示唆された.66.7%のプロジェクト実行者が広告効果やファンを増やすなど従来の資金調達にはないメリットをクラウドファンディングの使用目的としていた.なお,プロジェクト成功者が失敗者よりも農業分野におけるクラウドファンディングの活用を高く評価している一方で,成功者も含め今後再度クラウドファンディングを利用しようと考えている実行者が多くないことも示された.