著者
小田原 悦子
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-54, 2019-12-25 (Released:2020-02-11)
参考文献数
27

回復期リハビリテーション患者がグループセッションの集合的作業をどのように経験するかを理解する ために,Ricoeur(リクール)の筋立て(ミメーシス)概念に基づいたナラティブ分析を使って探索した. 探 索を通して以下のことが明らかになった. まず,グループセッションの参加メンバーは,共通のゴール,目的,機能を共有する一方で,それぞれに個別のゴール,目的,機能があり,グループにそれぞれの過去の経験を持ち込むこと. そして,個々のメンバーは,セッション中,集合的作業に従事し,現在の共通の経験を共有するが,持ち込んだ過去の経験を通して,その時の経験を意味づけること,さらに,将来への希望を見い出すために,現在の経験から作った意味を利用することである. 将来へのアクションという希望が現れることは,治療的グループ作業の主な結果であると考えられる. グループセッションには,作業と人間存在の社会的性質を利用して,各個人が自分の将来へ向かって動くように手助けする可能性があることが示唆される.
著者
齊藤 ふみ 小田原 悦子
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences
巻号頁・発行日
vol.11, pp.59-69, 2016-03-31

精神障害を持った人が健康感を持って社会に参加するためには何が必要なのか,統合失調症者の西純一氏(仮名)の手記「精神障害を乗り越えて 40 歳ピアヘルパーの誕生」を読み,Schultz & Schkade の「作業適応過程モデル」を参考に回復段階ごとの日常生活の作業経験を分析した.本研究はナラティブ分析による質的研究である.Schultz & Schkade は,人は環境との交流の中で,「出来るようになりたい」と願い環境に働きかけ(習熟願望),環境は人に「できるように」期待,要求する(習熟要請)と述べた.その結果,その環境との交流で,人は作業に従事して環境に挑戦し,役割を得ると指摘した.西氏の場合,症状の強い段階では彼の環境は制限され,心身の保護とセルフケアが生活の主要な作業であったが,回復に従って環境からの要請が生産的なものへと移り変わり,それに応えて社会的な作業を通して環境に働きかけることで西氏は社会参加を実現させた.作業療法においては,健康感を持って社会に参加するように援助するためには,最大限の適応反応を導くことができる環境を見極めることが必要であることが示唆された.
著者
小田原 悦子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.286-291, 2013-10-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
15

作業療法は1917年に設立され,作業を使って障害,病気の人が社会に復帰するように援助する専門職としてアメリカで教育が始まった.作業療法の設立者が専門職を人間の健康は日常の作業によって形成されるという包括的な見方に基礎づけたことを反映し,学生教育は幅広いものであった.その始まりから,臨床家の教育に影響する健康の概念に関する2度の大きな転機があった.1.リハビリテーション医療との密接な連携によって保護されたが,伝統的な医学モデルに影響を受け,医療診断に基づいた臨床を発展させた.2.健康のより広い概念,参加モデルへ再度移行した.作業療法研究者,教育者の視点から,第2の転機における文化人類学の貢献を述べる.