著者
甲斐 公規 高木 雅之
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.66-73, 2022-12-31 (Released:2023-02-01)
参考文献数
18

近年,男性が積極的に育児に参加することが求められている.男性が父親になっていくプロセスは,育児という作業を通して起こるトランザクショナルな変化であり,父親になっていくプロセスを理解するに は,個人の経験を注意深く見る必要がある.よって本論では,父親であることに付随してトランザクショナルに拡大していった作業経験を振り返った.その結果,主体的な Doing によって,男性が理想的な父親や活動家としての Being に調和的に変容していったことが分かった.また,育児という作業が起点となり,育児を取り巻く状況的要素と有機的に交わって調和し,作業が発展しながら継続的にトランザクションを生じさせるプロセスが明らかとなった.さらに,一個人の父親の奮闘から始まった行動は,身近な集団レベルに波及し,集合体レベルでのより作業的に公正な社会づくりへとつながっていったと解釈できた.
著者
Karen E. ATLER
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.12-29, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
47

日本作業科学研究会第24回学術大会の基調講演において,作業経験を知ることがいかに作業の複雑性 を知ることになるのかを探っていった.作業の複雑性を知ることは,well-being への入り口となりうる.本 論文では,作業を知ること,あるいは作業に関する主観的な視点を探求することが,どのように 1)作業と well-being の関係について作業科学者の理解を支援する,2)作業がどのように well-being に貢献したり影響を与えたりするか,他者が理解できるように作業科学者を支援することを可能にするか論じていく.はじめに私自身の研究,経験,その他の学術的研究から,作業経験と well-being,そしてそれらの交わりについて定義し,説明する.次に,作業経験の定量的評価である作業経験プロフィール(Occupational Experience Profile: OEP)を紹介する.そして,1)人々が直近で何をし,何を経験したかを評価し,2)作業経験と well-being の関係についてのユーザーの認識を促進するために,その価値を説明する.最後に,作業経験の定量的評価の拡大により,作業科学者が個人や集団の作業と well-being の関係を明らかにし続けることができるようになることを,いくつかの例を挙げて説明する.
著者
吉川 ひろみ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.38-39, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
吉川 ひろみ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-9, 2023 (Released:2023-07-06)
参考文献数
30

本論の目的は,作業科学と幸福との関連を考えることである.まず,作業療法士である筆者の疑問から,どのように作業を考えてきたかを紹介する.作業の意味についての議論を 8 側面で整理することができる.まず感情を揺さぶる作業は意味がありそうだ.作業は手段にもなるし目的にもなるし,両方のこともある.作業を通して人,物や場所,時間を超えたつながりを感じる.アイデンティティとつながる作業もある. 作業は健康に影響を与える.ある作業を生活に取り入れると生活が組織化される.作業には時代や文化が作り出す社会的意味がある.作業をどの分類として語るかにより何らかの意味を帯びる.そして,前野氏による幸福の 4 因子が,上記の 8 側面とどのように関連しているかを考える.最後に,作業の類似語である労働についての考えを参照し,作業科学が個人の幸福を超えて,社会のビジョンとして作業的公正を目指していることに言及する.
著者
カム ビョーン=オーレ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.32-44, 2019-12-25 (Released:2020-02-11)
参考文献数
30

ライブ・アクション・ロールプレイ(LARP,ラープ)は即興劇,共有ストーリーテリングとゲーム要素(ルール,チャレンジ等)の組み合わせにより,人々が自分の日常と異なる世界を体験できる方法である. 企業でのロールプレイング訓練またはサイコドラマに似ている活動であるが,練習や治療よりも物語の共同創作や体験に重点的に取り組む. また教育と政治の文脈で実施されるLARPが増えている. その目的は参加者を考えさせることであり,学習のためにLARPの参加のみではなく,事前ワークショップと事後ディブリーフィングを行うことも特徴である. LARPは参加者にとって直接的な体験になりうるので,共感または意識向上を目的とした活動で役に立つと思われる. そのような目的でLARPを使用する例として,本稿は「ひきこもり」経験者へのインタビューに基づいてデザインしたLARP「安心からの脱出」の実践を紹介し,その学習効果分析の可能性を検討する.
著者
山根 奈那子 吉川 ひろみ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-54, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
35

作業バランスを評価する尺度に関する15文献をレビューした結果,16種類の尺度が開発されていた. 測定方法は自記式質問紙が多く,主観的に当事者が作業バランスを自己分析する方法が中心であった.作業バランスを評価する尺度に含まれる定義において,類似した記述内容を共通する要素として抽出し,【作業の量】,【作業のバリエーション】,【自身の価値観との一致】,【作業遂行の結果】の4つのカテゴリに分類した. この 4 側面から作業バランスを調整することで,作業と健康との関連を明らかにする研究を展開できることが示唆された.今後の課題として作業バランスの概念の明確化と可視化が挙げられた.
著者
カム ビョーン=オーレ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.32-44, 2019

ライブ・アクション・ロールプレイ(LARP,ラープ)は即興劇,共有ストーリーテリングとゲーム要素(ルール,チャレンジ等)の組み合わせにより,人々が自分の日常と異なる世界を体験できる方法である. 企業でのロールプレイング訓練またはサイコドラマに似ている活動であるが,練習や治療よりも物語の共同創作や体験に重点的に取り組む. また教育と政治の文脈で実施されるLARPが増えている. その目的は参加者を考えさせることであり,学習のためにLARPの参加のみではなく,事前ワークショップと事後ディブリーフィングを行うことも特徴である.LARPは参加者にとって直接的な体験になりうるので,共感または意識向上を目的とした活動で役に立つと思われる. そのような目的でLARPを使用する例として,本稿は「ひきこもり」経験者へのインタビューに基づいてデザインしたLARP「安心からの脱出」の実践を紹介し,その学習効果分析の可能性を検討する.
著者
近藤 知子
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-43, 2021-12-25 (Released:2022-01-08)
参考文献数
28

「作業」は,作業療法の軸となる概念の一つであり,これを教えることは,作業療法教育において不可欠である.本論文は,作業科学を基盤に,「作業」および「作業的存在」の概念を教えるプログラムを紹介することを目的とする.プログラムは,これから作業療法を学んでいく学生が専門職としてのアイデンティティ を育んでいくための土壌を作ることを念頭に,対象を 1 年生とした.内容は, 1 )作業療法の歴史の価値と変遷, 2 )作業と作業的存在の理解, 3 )作業の見方, 4 )意味のある作業, 5 )作業の文脈, 6 )意味のある作業と作業的存在の理解, 7 )作業的公正, 8 )作業療法と作業のトピックから構成され,各90分,合 計 8 回の授業を行うことを想定した.本論には,授業前課題,授業内講義・演習,グループワーク,グループプレゼンテーションなど具体的にどのような教育方法を用いているかを記すと共に,授業に対し学生が抱いた感想も含めた.
著者
Lorrae MYNARD 春原 るみ 杉田 美歌
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.10-20, 2023 (Released:2023-07-06)
参考文献数
16

新型コロナウィルスは世界的な作業の混乱を招き,日常生活に広範囲な変化をもたらし,健康や Well-being に対する挑戦を与えている.この状況は作業療法士に作業療法のアートとサイエンスを実践する機会を与えてくれる.作業療法理論と作業科学の知識を,日常生活の混乱に対する支援での実践的スキルに統合することで,作業療法士はこのパンデミックへの対応においてクライアントと同僚の両方,そして広く地域を支援するのに適切な立場にいる.本稿ではパンデミックの状況における市民レベルでの介入の事例を紹介し,新たな機会の提示として考察の重要性と混乱に対する考え方を検討する.
著者
ボンジェ ペイター
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.2-13, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
30

作業科学や作業療法の文献には,当事者にとって意味のある作業を可能にする目標に向かって,様々なストラテジーから構成されたアプローチが提案されている. そのような典型的アプローチの実施は,当事者にとって健康な生活やウェルビーイングのために,「作業の力」を十分に活用しているかという疑問を生じさせる. 本論文では,行動の中のナラテイィブ(Narrative-in-Action)方法論とトランザクション論(相互浸透論)を媒介(手がかり)にして,人々のおかれている日常の生活とセラピューティック場面から,機会がどのように生じるのかを探る. そのような計画されていない機会を活用することは,人々が病気や怪我の後,自分らしい生活への移行中であるとしても,そして,まだ達成されていない長期的な目標があるとしても,彼らが満足できる生活に近づくだけでなく,むしろ,彼らがそれによって健康やウェルビーイングを経験することになりうる.
著者
タウンゼント エリザベス
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-27, 2017-12-20 (Released:2019-04-04)
参考文献数
42
被引用文献数
2

社会はあらゆるところで,社会の課題を変換し,減らすことができるように取り組んでいる. 日本,カナダなど高齢者や障害者に優しい地域で,高齢者がよりよく生きる機会を模索している国であっても,多くの国の高齢者は社会の課題と考えられている. 作業のレンズは,人生の最期における意味のある作業の探求を理解する視点など,日常生活の課題に新しい洞察を与えるものであり,多くの個人主義的な視点を持つ素晴らしい概念の贈り物である. 批判的な作業のレンズは,現実の生活の中でどのように作業的公正,作業的不公正,作業権が経験されているか (されていないのか) を決定する権力関係に対する社会の視点において,この贈り物を豊かにしている. この論文の第一の目的は,日本の高齢者の例を基に考えながら,公正や権利を見るために,作業のレンズと批判的な作業のレンズを区別することである. もう一つの目的は,特に,作業的公正や作業権を理解し,他者へ伝え,表現するための基礎となる作業的リテラシーについて研究することや日本と世界中の高齢者にとって作業的にちょうど良い世界に向かうために必要な社会の変革を研究することを通して,学際的研究におけるこの視点の有用性 (非有用性) を簡潔に検討することである.
著者
吉川 ひろみ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.86-89, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
23
著者
今井 忠則
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1, 2021-12-25 (Released:2022-01-08)

本誌は,作業科学(OS)を専門とする国内随一の学術誌です.「作業」に関する知識の蓄積は,作業中心の実践(OCP)を支える基盤的根拠として重要なだけでなく,学問分野の一つとして人間科学や健康科学にとって重要です.しかし,その重要性と比べて,日本の OS 研究の論文発表の数と質は現状では十分とはいえません.本誌に掲載される研究論文数が低迷している要因の一つに,査読システムの不透明さがあったと個人的には分析しています.投稿してから掲載までの査読プロセスと,そのおおよその期間が読めない(予測できない)こと,および,査読対応に過度な負担がかかる場合があることなどが,本誌への投稿を躊躇させている要因ではないかと思っています.そこで,本誌編集委員会では,論文発表の活性化と持続可能な運営システム(査読制度等)の構築を目指し,先駆的な他雑誌の査読システムを参考に, 2 年程度でより公正で効率的な査読システムの構築を試みています.以下のその現状の準備状況と基本的方針についてお伝えいたします.
著者
森川 すいめい
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.92-97, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
3

1960 年代,フィンランドの精神医療の中で「Need-Adapted Treatment」といった考え方が生まれた. 精神病院での病状が切迫したような急性期の初回面接時,それまでは,本人抜きで入院や治療方針が決まっていたが,アラネンらはその意思決定の場に本人とその家族を招き対話(ダイアローグ)した. ただこれだけで入院の必要性が4割に減った. この考え方は1981年に国家プロジェクトとなった. その影響を受けるようにして,1984年にオープンダイアローグが誕生した. オープンダイアローグは,フィンランドの西ラップランド地方ケロプダス病院を中心に1980年代から開発と実践が続けられてきた精神医療やケアシステム全体を総称したものである. 「本人のいないところで、本人のことを話さない」「対話主義」「即時支援」「リフレクティング」「病はひととひとの間に起る」「ネットワークミーティング」「Need-Adapted Treatment」「treatment の場面では1対1にならない」「自分を大切にすること」などといった考え方が,クライアントやそのご家族のニーズに徹底して寄り添いダイアローグを続けることによって大切にされていった. この実践が驚くべき成果を上げ国際的に注目されている. 例えば国の調査では治療を受けた人の約8割が就労か就学した(対照群では約3割). オープンダイアローグは,サービス供給システム, 対話実践, 世界観などのいくつかの側面からとらえることができる. この西ラップランドで開発されたオープンダイアローグを日本のそれぞれの現場で実践するにはどうしたらいいのか. 今回はそのヒントに迫るためにダイアローグの場をつくる.
著者
Ippei KAWASAKI Kuniaki NAGAI Yoshihisa MASUMITSU Kanae SAGAWA Satoshi KONDO
出版者
Japanese Society for Study of Occupation
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-65, 2022-12-31 (Released:2023-02-01)
参考文献数
18

Abstract: Background: Due to the COVID-19, many people are forced to restraint from their activities. People who are restricted in their activities can be said to be in a state of occupational deprivation, but it is thought that they might be taking action to keep themselves healthy even in such a blocked situation. The purpose of this study is to determine the differences in coping behaviors between elderly and young in dealing with occupational deprivation, and to show the potential for new health promotion, especially for elderly based on the results. Methods: To explore the state of occupational deprivation among the elderly and the young and their coping behaviors, a questionnaire survey of 89 elderly and 264 young generation was conducted. In the questionnaire, basic attributes of the respondents, self-rated health, things they had stopped doing or reduced the number of times they did, and things they had started doing or increased the number of times due to the COVID-19 were asked. We analyzed the feature of coping behavior under occupational deprivation by the elderly and the young. Results: The coping behaviors were categorized into the following four groups: "loss or decrease of existing occupations," "enhancement of existing occupations," "continuation and maintenance of existing occupations," and "introduction of new occupations". There were no significant differences in self-rated health among the four groups, but there was a trend toward lower self-rated health when comparing "loss or decrease of existing occupations" and the other groups. The elderly tended to engage in outward-looking occupations such as creating social connections online, while the young tended to engage in inward-looking occupations such as familiar household chores and hobby. Conclusion: People had different coping behaviors that tended to vary by generation against occupational deprivation. Using online is already familiar among the elderly, and it is necessary to recognize for those potential they have and develop health promotion activities using ICT technology and other means.
著者
小田原 悦子
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-54, 2019-12-25 (Released:2020-02-11)
参考文献数
27

回復期リハビリテーション患者がグループセッションの集合的作業をどのように経験するかを理解する ために,Ricoeur(リクール)の筋立て(ミメーシス)概念に基づいたナラティブ分析を使って探索した. 探 索を通して以下のことが明らかになった. まず,グループセッションの参加メンバーは,共通のゴール,目的,機能を共有する一方で,それぞれに個別のゴール,目的,機能があり,グループにそれぞれの過去の経験を持ち込むこと. そして,個々のメンバーは,セッション中,集合的作業に従事し,現在の共通の経験を共有するが,持ち込んだ過去の経験を通して,その時の経験を意味づけること,さらに,将来への希望を見い出すために,現在の経験から作った意味を利用することである. 将来へのアクションという希望が現れることは,治療的グループ作業の主な結果であると考えられる. グループセッションには,作業と人間存在の社会的性質を利用して,各個人が自分の将来へ向かって動くように手助けする可能性があることが示唆される.
著者
Stina Meyer LARSEN
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.18-30, 2020-12-25 (Released:2020-12-31)
参考文献数
13

茨城で開催された第23回日本作業科学セミナーにゲストスピーカーとして招待して頂いたことを,私は今でも大変嬉しく光栄に思っている.セミナーに参加することは,日本の作業科学の分野で行われている研究について学ぶための刺激的な機会となった.私の講演は主に,Journal of Occupational Science(Larsen 他,2019)に掲載された原稿に基づいており,この解説と共に日本語訳されている.テーマは「変容する作業と未来~先端テクノロジーは作業の何をどう変えるのか~」だったが,作業とテクノロジーの相互作用に関する多くの興味深い視点がセミナーの中で共有され,議論された.これらの議論は,作業科学者や作業療法士としての私たちが,作業とテクノロジーとの関係をどのように考え,認識するかについて,熟考する良い機会となった.このコメンタリーでは,このセミナーの振り返りを皆さんと共有していく.
著者
渡邊 潤
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.67-72, 2019

高田晃さんは,株式会社ラグランジュポイント代表取締役社長であり 手帳ライフコーチです. 1 冊のマイ手帳を活用した目標達成メソッドで, 起業・副業・集客・ビジネス拡大を支援するビジネスコーチです. 「手帳に自分を合わせるのではなく,自分に手帳を合わせる」をコンセプトに,完全オリジナルの手帳を導入して夢の実現や目標達成をサポートするところが特徴です. 本業は,Web コンサル会社の代表を務める経営者です.
著者
山地 早紀 吉川 ひろみ
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.41-49, 2020-12-25 (Released:2020-12-31)
参考文献数
16

本研究の目的は,高齢者の「人生を代表する作業」との出会いとプロセスについて明らかにすることである.本研究では,人生の中で長年行っていること,夢中で行っていること,自分を表すのにピッタリなものを「人生を代表する作業」とした.対象者は,地域在住の75歳から90歳の 8 名(男性 5 名,女性 3 名) の「人生を代表する作業」のある高齢者で,半構造的インタビューを用いて,逐語録を作成し,グラウンデッ ド・セオリー・アプローチを参考に分析を行った.分析により,【環境の影響による開始と継続】,【時間とともに強まる結び付き】,【作業が生み出す魅力】,【自分と環境に合わせた調整】,【能力や経験の活用】,【継続 の意思】の 6 つのカテゴリーが出現した.「人生を代表する作業」は,環境の影響により始まり,継続され, 時間と共に結び付きを強め,継続の意思を示すものであった.そしてその出会いとプロセスには,作業が生み出す魅力や自分と環境に合わせた調整,自分の能力や経験の活用が影響していた.
著者
森川 すいめい
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.92-97, 2018

1960 年代,フィンランドの精神医療の中で「Need-Adapted Treatment」といった考え方が生まれた. 精神病院での病状が切迫したような急性期の初回面接時,それまでは,本人抜きで入院や治療方針が決まっていたが,アラネンらはその意思決定の場に本人とその家族を招き対話(ダイアローグ)した. ただこれだけで入院の必要性が4割に減った. この考え方は1981年に国家プロジェクトとなった. その影響を受けるようにして,1984年にオープンダイアローグが誕生した.オープンダイアローグは,フィンランドの西ラップランド地方ケロプダス病院を中心に1980年代から開発と実践が続けられてきた精神医療やケアシステム全体を総称したものである.「本人のいないところで、本人のことを話さない」「対話主義」「即時支援」「リフレクティング」「病はひととひとの間に起る」「ネットワークミーティング」「Need-Adapted Treatment」「treatment の場面では1対1にならない」「自分を大切にすること」などといった考え方が,クライアントやそのご家族のニーズに徹底して寄り添いダイアローグを続けることによって大切にされていった.この実践が驚くべき成果を上げ国際的に注目されている. 例えば国の調査では治療を受けた人の約8割が就労か就学した(対照群では約3割).オープンダイアローグは,サービス供給システム, 対話実践, 世界観などのいくつかの側面からとらえることができる. この西ラップランドで開発されたオープンダイアローグを日本のそれぞれの現場で実践するにはどうしたらいいのか. 今回はそのヒントに迫るためにダイアローグの場をつくる.