著者
長坂 嘉久 深谷 奎太 宮沢 千瑛里 吉原 光 宮田 義潤 小田部 夏子 糸数 昌史
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-020, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】発達性読み書き障害は,読み書きの能力が年齢,知能,教育の程度から期待されるレベルより低く,難聴や弱視を持たない場合である.また,先行研究より上肢関節位置覚は発達に伴う再現誤差の減少が確認されているが,手指動作評価はない.これらから書字に影響する関節位置覚評価が必要と考え,本研究では指間距離を赤外線センサを用いて計測し,発達に伴う関節位置覚の検討を行った.【方法】対象は、健常大学生21名,健常小学生23名(低学年児10名,高学年児13名),読み書き障害児9名とした.研究実施にあたり国際医療福祉大学研究倫理委員会の承認(承認番号15-T-13)を得た後に,対象者に十分な説明を行って同意を得た.指間距離は脳活計(ソフトシーデーシー)に接続した赤外線センサ(Leap motion)を用い,センサで得た手の空間座標から母指と示指間の直線距離を算出し,指間距離とした.計測肢位は座位とし,肩関節・肘関節を軽度屈曲した肢位で肘頭を机上の計測用台座に接地させ,前腕を台座に乗せセンサから約15cm上方に手が位置するよう固定した.計測運動は母指および示指のIP関節を伸展位を保持して母指と示指の指腹を近づける運動とした.計測は始めに母指と示指の最大距離を計測して開始肢位を設定し,その半分の距離を計測課題と設定した.計測課題の肢位(A)を5秒間記憶した後,手を開始肢位に戻し,次に記憶した肢位を再現させた(B).AおよびBの指間距離の差分の絶対値(|Δ|)を再現誤差と定義した.統計処理はJSTAT Ver16.1にて,Kruskal-Wallis検定と多重比較検定としてScheffe法を用いた.有意水準は5%とした.【結果】年齢が低くなるとともに,|Δ|は増加した.大学生と低学年児,大学生と読み書き障害児の間で有意な|Δ|の増加が認められた.【考察】先行研究と同様に指間距離においても,発達に伴う再現誤差の収束が認められ,発達に伴う手指などの関節位置覚の精度向上を反映していると考える.
著者
小田部 夏子 原田 浩司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

書きの困難さの背景には、運動覚性記憶能力や文字の中にまとまりを見つける能力に問題があるのではないかと考え、それを確かめること、さらに運動覚性記憶に問題がある場合は運動感覚に問題がないかを確認することを目的とした。運動覚性記憶は運動覚性書字再生、音読課題で測り、文字の中にまとまりを見つける能力はまとまりを見つける課題を作成し、読み書き困難児と定形発達児に実施し比較した。運動感覚は手の関節位置覚を再現法にて評価し、先行研究で得られた値と比較した。その結果、読み書き困難児に運動覚性記憶の形成に問題がある者が多く運動感覚が不良であること、まとまりを見つける能力が書きに影響していることが示唆された。