- 著者
-
塩見 誠
糸数 昌史
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【はじめに,目的】日本での腰痛の有訴者率は高く,年代が上がるにつれて高くなる。太田らは腰痛患者を対象とし体幹深層筋に焦点を当てた運動療法を施行した結果,腰痛の程度が改善し,さらに腹横筋,第3,4腰椎高位における多裂筋の筋厚が増加したと報告しており特定の運動療法の効果は認められている。国民のスマートフォン(以下スマホ)所持率は近年67.4%と高い。スマホには様々なアプリケーション(以下APP)が存在しており運動学的解析APPでは,妥当性,再現性は低速歩行にて三次元位置解析装置と同様の性能を有することを示しており,簡便である。またスマホにはミラーリング機能(以下MS)があり携帯端末の画面を投影することが可能である。そこでスマホAPPとMSを組み合わせ視覚的バイオフィードバックシステム(以下BFS)を考案した。本研究は一般的に普及されているスマホを用いて腰痛患者に効果的な運動療法の姿勢特性を捉え,BFSを用いて姿勢の制御を行うことが可能かどうかを明らかにする。</p><p></p><p></p><p>【方法】健常成人男性9名(年齢25.1±2.5歳),測定環境はiPhoneとiPod touchを重ね仙骨後面に固定し,iPhoneのデザリング機能を用い同一Wi-Fi環境とした。使用APPはCSV出力用として「ジャイロくん3」,視覚提示として「水平器Pro」を使用,BFS画面は「Reflector2」を用いてMacBook Pro(Apple Inc)に投影した。</p><p></p><p>姿勢保持は1分間行い,四つ這い対側四肢挙上運動(右上肢-左下肢挙上)とし,条件は1)FB有り,2)FB無しの2条件をランダムに選び,計測は四つ這いでの骨盤の位置を基準とした。運動は「ドローイン後,手と足を地面に水平になるように挙上する様に」と指示した。基準は地面(前後傾,左右回旋0°)とし,FB有りでは画面上に映し出される目印を基準0°に姿勢を合わせるよう指示した。解析は運動開始から20~60秒の40秒間を採用(50Hz)。FBの有無による骨盤前後傾,左右回旋角度を得た。運動中の骨盤角度変化の傾きを恒常誤差(CE)基準値からの誤差を全体誤差(TE)角度変化のばらつきを変動誤差(VE)にて算出し,2条件の平均を対応のあるt検定を用い統計ソフトSPSS用いて解析した。(有意水準5%)</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>CEでは骨盤は前傾,左回旋する傾向にあった。FBありで前傾は有意に基準に近づいた。</p><p></p><p>TEでは骨盤前後傾角度でFB無しでは6±4°FB有りでは3±2°と有意な変化を認めた。</p><p></p><p>VEでは骨盤左右回旋角度でFB無しでは2±1°FB有りではと1±1°と有意な変化を認めた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>四つ這い対側挙上運動においてFB無しで骨盤位置がより左回旋かつ前傾の傾向になっているため姿勢保持に大臀筋の膨隆,体幹背筋が作用した可能性が考えられる。骨盤位置の制御では視覚的BF有りの方が目標の位置からの誤差が小さく,運動中の動揺が少ないことが明らかになった。スマートフォンを用いたBFSにより姿勢特性を捉えられかつ制御できる可能性が示された。</p>