著者
小畑 博靖 平 和弘 石田 賢治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.628, pp.85-90, 2006-03-02
参考文献数
16
被引用文献数
2

広帯域かつ高遅延な衛星インターネット上において,従来のTCP(例えばNewReno)を用いると十分なスループットが得られないことが知られている.このような衛星インターネットに適したTCP幅輳制御方式としてTCP-STARが提案されている.TCP-STARは衛星インターネット上において,従来TCPと比べて高いスループットが得られることがシミュレーションにより確認されている.しかし,実ネットワークではシミュレーションのような理想的な環境で通信を行えることは少なく,実装による性能評価が不可欠である.そこで本稿では,先ず実ネットワークにおけるTCP-STARの評価を行うため、NetBSD1.6.2-Releseのカーネル内にTCP-STARを実装した.次に,ハードウェアネットワークエミュレータを用いて衛星回線を考慮したテストベッドを構築し,このテストベッド上で既存TCPとTCP-STARとをスループットに関して比較評価した.その結果,実装したTCP-STARは従来のTCP(TCP-NewReno)および無線ネットワーク用TCP(TCP-J)と比べて高いスループットが得られ,衛星回線上においてTCP-STARの機能は効果的に動作することを確認した.また,実装したTCP-STARにより得られた結果は,シミュレーションにより得られた結果とほぼ同等の値が得られていることが分かった.
著者
赤瀬 謙太郎 小畑 博靖 石田 賢治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.624-632, 2009-03-25
被引用文献数
6

べストエフォートネットワークであるIPネットワークにおいて,高い通信品質を必要とする重要通信やリアルタイムアプリケーションに通常のTCPを用いると,必要な帯域が確保できないという問題が生じる.このようなアプリケーションに安定した通信品質を提供するためには,帯域の確保が有効である.現在,送信端末のTCPふくそう制御のみを用いて帯域確保を実現する技術が提案されている.しかしながら,従来方式では帯域確保のために積極的なウィンドウ制御を行うため,通信回線が重度のふくそうに至った場合,逆に帯域確保が困難になるという問題がある.そこで本論文では,背景フロー数が多い状況下や帯域確保TCPフローが複数本存在するといったネットワークのふくそう度が高い状況において,目標帯域を一時的に下げることでふくそうを回避し,その後ふくそうの度合が緩和された際に目標帯域の確保を目指すTCPふくそう制御方式を提案する.シミュレーション評価により,提案方式は従来方式に比べ,ネットワークのふくそう度が高い場合でもボトルネックリンクの帯域利用率を低下させることかく一定の帯域を確保できることが分かった.