- 著者
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小笠原 喜康
中里 勝芳
- 出版者
- 日本大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究は、科学教育を幼少期から進めるために、科学博物館で教材を貸し出すことを目的としてローンキットを作成し、それを幼稚園・保育所、小学校などで、実践試行して利用を推進するための条件などを検討することを目的として進められた。これを進めたのは、OECDの国際学習到達度調査(PISA)において、日本の子どもたちが科学に全く興味を持っていないことがあげられる。かたやまた、科学博物館をはじめ博物館があまり学校教育に利用されず、「総合的学習の時間」が始まったものの、教師達は十分な教材を準備できずに苦労をしている。そこで本研究では、なるべく早い時期から科学的現象に親しんでもらい、科学館なども利用してもらうきっかけをつくために、科学館内外で利用できる光を題材としたローンキットを作成した。キットは、全体を「杉並ゆめたまご」と命名して、「光のへや」「鏡のへや」「光と影」の三つのキットを作成した。そしてそれを、「杉並科学館」「青砥福祉保育園」「湘南学園小学校」で試行して、その活動を記録して、その開発課題を検討した。キットの試行の結果、年齢の違いによって、この教材へのアプローチに違いがあることは当然であるが、こちらの予想以上に、多くの遊びを考案することがわかった。中でも「カラーシール」は、単にガラスなどに貼って色を楽しむことから、それを様々に重ねて新たな色の光を作りだすことに多くの子どもが挑戦していたのは印象深かった。また予想外に、保育所や小学校の教員達が興味を示し、今後とも使っていきたいという意志を示していたのも収穫であった。しかし同時に、ランプ類の耐久性やテントや局面鏡の設置の問題が見つかった。費用との関係もあるが、もう少し耐久性のあるものを開発したり、修理の道具もキットに含めることが必要であることが了解された。