著者
佐藤 雄大 鹿野 和彦 小笠原 憲四郎 大口 健志 小林 紀彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.1, pp.31-46, 2009-01-15 (Released:2009-06-05)
参考文献数
51
被引用文献数
4 3

本研究は,秋田県男鹿半島西南部に分布する中新統台島層について調査し,その岩相と層序を明らかにした.台島層はデイサイト火砕岩,玄武岩質安山岩溶岩および同質火砕岩,淡水成堆積岩から構成され,下位より双六沢礫岩,双六沢デイサイト,双六玄武岩,館山崎デイサイト,椿砂礫岩の5部層に区分される.台島層を構成する火山岩の岩相と層序,これまで報告されてきた放射年代は,男鹿半島西部の内陸に分布する野村川層と同じであり,また,共に門前層を不整合に覆い,西黒沢層に覆われることから台島層と野村川層は対比可能である.台島層および野村川層火山岩は,それらの放射年代に基づけば,約21 Maに噴出・定置した可能性が高い.それらはバイモーダル組成で量も多く,いずれも古地磁気偏角は現在とは異なる北西を指す.したがって,台島層・野村川層火山岩の噴火は,日本海の急速な開裂の始まりを示す可能性が高い.
著者
大口 健志 鹿野 和彦 小林 紀彦 佐藤 雄大 小笠原 憲四郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.Supplement, pp.S17-S32, 2008-09-18 (Released:2011-12-22)
参考文献数
53
被引用文献数
3 1

最近数年間,とくに火山岩が厚く累重している赤島層や門前層,台島層を対象に,火山岩の噴出・累重様式や噴出環境を調べ,個々の火山岩相を識別し,火山岩相相互の関係を明らかにして,その岩相層序を組み立て直す作業に取り組んできた.この巡検ではその成果の一端として,台島層を構成するカルデラ充てん堆積物,始新世~漸新世のマグマ水蒸気爆発噴出物,水際に定置した後期始新世の火山噴出物,前期始新世の火砕流堆積物と火山角礫岩など,始新世~前期中新世のリフティングに伴う火山活動で形成された様々な火山岩相を紹介する.また,火山岩相解析が火山岩を主体とする地層の火山学的側面を明らかにする上で効果的であることを示す実例の一つとして,戸賀火山の噴出物と構造を紹介する.
著者
小笠原 憲四郎 本山 功
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本年度は昨年度に続き本邦新生代の浅海性動物群を産する地層の層序年代や古環境が未だ確定できていないものについて形成年代や古環境を検討するため、北海道岩見沢市から門別町地域の朝日層とされている下部中新統につて現地調査を実施した。特に朝日層の模式地とされている岩見沢市の旧朝日炭鉱地域において大型化石だけでなく統合微化石層序の検討のため、系統的資料を採集した。また夕張地域から門別地域にいたる朝日層に対比される可能性の高い滝ノ上層とされている下部中新統についても同様の系統的料採集を行った。これらの現地調査と料採集には代表者の小笠原と分担者の本山が、それぞれ分担して別個に行い、特に、これまで未検討であった渦鞭毛藻層序の検討を新たにすすめている。また既存の浅海性化石資料の層序学的・分類学的再検討のため、東北大学総合研究博物館に所蔵の北海道の渡島半島と夕張-日高地域の下部中新統の化石資料について再検討し、それらの産出地点と層序的位置づけを確認し、さらに分類学的再評価を行った。筑波大学生命環境科学研究科に所蔵保管の関連する化石資料についても、昨年度と同様に継続して通年で系統的に層序と分類学的再検討を行うため、週1回の割合で非常勤の専門家を雇用してデータ整理を行った。また雇用者には、平成22年度国内雑誌等公表論文の新生代年代層序に関するデータも整理し、従来のデータ更新や再検討の基礎資料とした。これらの研究結果は、昨年度の実績を踏まえ、2編の論文として学会誌に公表し、さらに長年の課題であった北海道北東部、歌登町の中新統タチカラウシナイ層の貝類化石群集の分類学的検討を論文として公表することが出来た。この研究では若干の消耗品と破損していたデジタルカメラの更新に経費を使用した。