著者
小西 英之 眞鍋 敬
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.310-314, 2014 (Released:2016-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

一酸化炭素(CO)は有機合成において最も重要な一炭素源として,古くから現在に至るまで実験室や工業プロセスに広く用いられている.しかしCOは無色無臭の気体であり,人間にはその存在が感知できず,さらにはわずか0.1%という低濃度ですら生命を脅かすほど危険な化合物でもある.このような高い毒性を有するCOは,入手容易ではあるが非常に扱いにくい物質であり,実験化学者たちもなるべく使いたくないというのが本音である.このような背景のもと,毒性の高いCOガスに代わる安全なCO等価体の開発を望む声が自然と高まってきた.実際,過去20年ほどで様々なCO代替品が発見されており,それらを用いる有機合成反応も数多く報告されている.筆者らは,ギ酸エステル等のギ酸誘導体が温和な条件下でCOを発生できることを見いだし,それを従来のCOガスの代わりに利用する実用的な有機合成反応の開発を行ったので,ここに紹介する.