- 著者
-
小野 孝彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.1, pp.10-15, 2013 (Released:2013-07-20)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
2
近年,糖尿病性腎症,慢性腎炎,腎硬化症など各種の腎疾患をひとまとめにして慢性腎臓病と呼んでいる。レニン・アンジオテンシン系に働く治療薬は慢性腎臓病治療の第1選択とされているが,七物降下湯は併用効果が期待される。基礎的研究では糖尿病性腎症の進展に八味地黄丸の抑制効果がある。近年の研究から腎炎や一次性ネフローゼ症候群において,柴苓湯はステロイドや免疫抑制薬の減量効果が期待される。慢性腎炎やネフローゼ症候群の背景となる病態として,柴朴湯の治療は頻回の上気道炎を減少させ,柴苓湯はアレルギーの関与が考えられるネフローゼ症候群に対して効果的な場合が見られる。小児の IgA 腎症に対して,前向きの臨床試験による柴苓湯効果のエビデンスも得られている。透析に至る前の慢性腎不全に対して温脾湯は,透析導入への延長効果が知られている。五苓散は血液透析時の透析困難を改善し,腹膜透析においては腹膜線維化の問題点に対して柴苓湯の改善効果が期待される。