著者
小野里 拓
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2018

本研究は、アメリカの専門職を中心とする大学職員のあり方やその育成方法について研究することを目的とした。アメリカにおいては、専門職化した大学職員自らによって様々な専門職団体が設立され、大学内専門職の重要性を訴え、関連政策に提言を行うこともある。こうした状況の中でHigher Education Programが多くの大学に設けられ、高等教育分野の修士・博士の学位を提供し、上級職を志向する大学職員のステップアップの手段となっている。専門職能と学位とが昇任のための車の両輪となり、そのシステムが専門職志向を強めている状況が推察される。本研究では、専門職としての大学職員への「入口」とも言える修士課程の高等教育プログラムに着目し、Pennsylvania State Universityをはじめとしたアメリカの大学関係者へのインタビュー調査や各プログラムの公式出版物、教員・学生による論考の収集・分析、最新の先行研究の批判的検討を通して、広く職員育成の観点からアメリカの高等教育プログラムの実態と効果について分析を行った。この際、日米比較を主眼に置いて分析を行うことにより、日本への適用を意識しながら研究を実施し、研究成果が日本の大学人事制度を中心とした大学経営に活用できるよう心がけた。その結果、アメリカの高等教育プログラムの学生を、学士課程から進学してきたフルタイム職未経験の学生と、現役職員である有職者学生の2タイプに大別できることが明らかになった。前者に対してはインターンシップやGraduate Assistantshipを通し、実務を経験させるとともに必要に応じて経済的支援を行い、後者に対しては実務経験を裏打ちする理論を学ばせ、上級職に求められる知識と学位を与えるのがプログラムの主たる目的である。こうしたニーズに応じて複数コースを設けるプログラムも多く、学位名称が異なる場合も少なくない(たとえばM.A.とM. Ed.)。今後は、専門職団体のありようについても研究を深めたい。
著者
小野里 拓也 佐藤 眞木彦 井田 憲一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.157-165, 2019-10-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

病棟看護師の勤務スケジュール作成は, 看護師長ら多忙なスタッフが多大な作業時間と労力を費やす消耗的な作業である。従前より自動化が強く望まれているこの問題は, ナーススケジューリング問題 (NSP) と呼ばれており, 異なるレベルの制約が縦横に絡まった複雑な組合せ最適化問題である。NSPに対して, 多くの最適化手法により様々な研究がなされている。中でも遺伝的アルゴリズムなどのヒューリスティクス手法が有望な結果を出しているが, その多くは実用規模の問題に対して, 全ての制約違反を解消した解の導出を実現できていない。またNSPには, 有料の製品も幾つか提供されているが, 経費が予算と折合わないことが間々ある. 更には, 商用ソフトのあるものは膨大な計算コストが必要だったり, また別のものは問題の性質によっては探索性能が安定しないなど, 問題を抱えているものもある。そこで本研究では, 遺伝的アルゴリズムを用いて, 実用時間内に安定して最良スケジュールが導出できるNSPシステムの開発を目指す。このシステムでは, 看護師間の勤務バランスを考慮しながら, 勤務シフトに関する要請とシフトパターンの制約を充足する解を導出することを目標とする。