著者
小関 聡美 藤井 陽介 加藤 登 安永 廣作 北上 誠一 新井 健一
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-29, 2006-11-30
被引用文献数
2

スケトウダラとパシフィック・ホワィティングの混合肉糊に3% 牛血漿粉末を添加し, 30℃ または50℃ で数時間予備加熱し, さらに90℃ で20 分加熱した. 30℃ で加熱すると, 続く90℃ の加熱によって肉糊は強い坐りゲルを形成するようになり, 二段加熱ゲルの破断強度とゲル剛性は高値に達する. 混合肉中のスケトウダラの割合を増やすと, 破断強度の最大値は比例的に増加するが, ゲル剛性はあまり増加しなかった. 一方, 50℃ で加熱すると肉糊は坐りゲルを形成せず, 全ての二段加熱ゲルの物性は低値に留まった.これらの結果は, 二段加熱ゲルの物性を大きく増強させる牛血漿粉末の機能が, 坐りを伴うゲルと坐りを伴わないゲルに対してでは明らかに異なることを示している.The functional effect of bovine plasma on heat-induced gel formation of the mixture of salt-ground meats from walleye pollack and Pacific whiting surimi was investigated in connection with preheating temperature.The mixture of salt-ground meats was preheated at 30 or 50℃ for several hours in the presence of 3% bovine plasma powder, and subsequently heated at 90℃ for 20 minutes to prepare two-step heated gel.Preheating of the mixture of salt-ground meats with bovine plasma at 30℃ increased the breaking strength and the gel stiffness of two-step heated gel. The maximum values of breaking strength were proportionally increased with rising of the ratio of walleye pollack surimi in the mixture, but those of gel stiffness were not increased. On the other hand, the preheating of the mixture with bovine plasma at 50℃ did not promote gel formation and consequently the breaking strength as well as the gel stiffness of all of two-step heating gels remained lower values.These results indicated that a functional effect of bovine plasma powder on the heat-induced gel formation of salt-ground meats with and without setting was evidently different.
著者
小関 聡
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1322-1328, 1994-12-01

HCV抗体測定法が開発されて輸血時のスクリーニング検査に導入されたことにより輸血後C型肝炎は激減したが, それ以外の感染経路については不明な点が少なくない. 今回その一つとされる母子感染の実態を明らかにする目的で, 当科ならびに関連病院を受診した4,801例の妊婦とその出産児を対象に, C型肝炎の母子感染の発生とその成立因子について検討し, 以下の結果を得た. 1) HCV抗体陽性者は4,801例中59例(1.23%), RT-semi nested PCR法によるHCV-RNA陽性者は25例(0.52%)であった. 2) HCV抗体陽性者のうち, 現在までに分娩に至った14例において, 分娩時臍帯血中HCV抗体は全例陽性であったが, HCV-RNAは全例陰性であり, 胎内感染と明らかに断定できる症例は存在しなかった. 3) 追跡中の13例の児のうち3例にHCV-RNAが検出され, 母子感染の発生率は全妊婦に対し0.06%, HCV-RNA陽性妊婦に対し23%であった. また, これら3例では, 妊娠末期の母体血清GPT値が軽度上昇を示したのに対して, 他の10例はすべて正常範囲内であった. 一方, HCV-genotype, 妊娠末期の母体血中HCV-RNAの半定量, HCV抗体価およびγ-GTP値と, 母子感染成立との間に関連性は認められなかった. 4) 児のHCV-RNAが陽性となった3例のうち, 1例は母体でのHCVとHIVとの重感染が認められたが, HIVの母子感染は認められなかった. 5) 母乳中にHCV-RNAが検出された症例が3例認められたが, これらの児からはHCV-RNAは検出されず, 母子感染における母乳の意義は不明であった. 以上より, C型肝炎の母子感染の存在が確認され, 母子感染成立の因子の一つとして妊娠末期における母体の肝炎の活動性が重要であることが示唆された.