著者
杉原 創 本田 武義 藤井 一至 舟川 晋也 岩井 香泳子 小﨑 隆
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.125-129, 2016-01-31

本論文では,日本有数の酒米生産地である兵庫県を対象に,地質が異なる地域で栽培された酒米を比較することで,酒米と栽培土壌の化学的性質がどのように関係するか,生産地域の土壌特性が酒米の品質にどの程度影響を与えるかに関して検討を行った。土壌試料は,堆積物地帯,玄武岩地帯,蛇紋岩地帯の地域から土壌(計20地点)を採取し,土壌中の全塩基含量,無機成分含量,および可給態窒素含量と全リン含量を分析した。酒米に関しては,堆積物地帯,玄武岩地帯の玄米の試料(計16地点)を採取し,土壌試料と同じ項目を分析した。その結果,堆積物地帯の土壌と比べ,玄武岩地帯,蛇紋岩地帯の土壌はマグネシウム,マンガン,亜鉛,鉄含量が多く存在し,その影響を受け,酒米も同様の成分が高い傾向にあることが判明した。このことは,酒米栽培土壌の地質の違いが,酒米の化学的性質の違い,ひいては日本酒の地域性を生み出す重要な要因の1つであることを示唆している。
著者
伊ヶ崎 健大 田中(髙橋) 美穂 佐々木 夕子 小﨑 隆
出版者
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.6, pp.127-134, 2013-03

日本人は砂漠化問題に関する関心が低いとされる。しかし、世界規模で取り組むべき砂漠化問題に個人が関心を持ち、それを理解することは、砂漠化に関連する食料安全保障や気候変動の問題に対する理解と環境保全活動に参加する人材の育成にも繋がることから極めて重要である。そこで本研究では、文献調査および2度の現地調査を通して砂漠化問題や現地の人々の生活、文化、価値観に対する日本人の理解を促進するための環境教育教材としてニジェール共和国を舞台にしたエコツアーおよびそれを補佐するプロモーションビデオとガイドブックを作成した。エコツアーについては、「最新の砂漠化対処技術の開発を目的した研究への参加」、「対象国自身が実施している砂漠化対策の視察」、「砂漠化に脅かされる野生動物の生態調査」、「現地の生活体験」、「現地ステークホルダとの討論」をコンテンツとして組み込んだ。また、プロモーションビデオおよびガイドブックについては、基本的にエコツアーの流れを重視して作成した。プロモーションビデオおよびガイドブックの教育教材としての有効性を検証した結果、ガイドブックを用いた講義およびプロモーションビデオの上映により、環境意識の高い日本の大学生および大学院生に対しては、砂漠化という現象およびその原因についてある程度正しく伝達することができ、また彼らの砂漠化問題、ひいては環境活動に対する興味を高めることができることがわかった。今後の課題としては、エコツアー自体の有効性の検証が挙げられる。この際、単に本研究で作成したエコツアーをモニターにより評価するだけでなく、既存の植林ツアーやエコツアーが有する教育効果との比較も不可欠である。