著者
倉林 しのぶ 芝山 江美子 宮崎 有紀子 李 孟蓉 尾島 喜代美 風間 順子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.76-86, 2014-09-26 (Released:2017-04-27)

本調査では、「虐待」および「虐待」のグレーゾーンともいえる「不適切な行為」の認識に影響を及ぼす因子と、その「気づき」を促すための方策を探ることを目的に介護関連施設職員240名を対象にした自記式無記名による質問紙調査を実施した。その結果、「虐待」として認識率が高いものは、"高齢者への被害が明らかな行為"であり「不適切な行為」としては、"高齢者本人に直接的な侵襲がないと思える行為"があがった。30%以上が「問題ない」と認識した行為はいずれも「安全優先」「施設都合」「家族優先」のいずれかが背景にあった。また、職種別による「虐待」の認識率は「介護福祉士」が最も高く、経験年数別では、「3年以上」が「3年未満」より高率であった。虐待や不適切行為を捉える能力は教育だけで身に付くものではなく、介護の実践経験を積むことで養われる能力の存在も示唆され、人材養成教育や職員教育の充実とともに、実践現場における事例検討等を含めた教育継続が必要である。また、対象者への直接的な侵襲がない行為でも守秘義務や自律尊重に関わる倫理的問題が含まれている場合があり、それらを見極める能力を高めることも必要と思われた。
著者
川久保 和子 尾島 喜代美 小谷 千晴
出版者
足利大学看護実践教育研究センター
雑誌
足利大学看護学研究紀要 = The bulletin of science of nursing research (ISSN:24350176)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.67-77, 2020

【目的】改正法成立後の脳死・臓器移植に関する先行研究を概観し,また,看護師が実際の移植現場で感受した内容や意識を明らかにすることで,看護師に必要となる支援について示唆を得る。【方法】医学中央雑誌Web 版,CiNii を用い,「脳死」「臓器移植」「看護」をキーワードに過去10 年間の文献を検索し研究動向を検討した。さらに,研究条件を満たした6 文献の内容を検討した。【結果】先行研究を年次別にみたところ年々減少傾向にあり,看護師自身に向けられた研究は少なかった。文献内容から,看護師は移植医療に対する戸惑いや複雑な感情を抱いていた。また,臓器提供マニュアルを読んだことがない割合が多く,知識不足により看護実践の場面で消極的な態度となっていた。【結論】移植医療に携わり職務遂行と人間の生死との狭間で苦しむ看護師に対し,看護師自身が抱える困難を表出できる支援が必要である。また,移植医療に対する知識獲得と,看護師自身が死生観について考え続けていくことが重要である。(著者抄録)