著者
尾崎 祐司
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.13-24, 2019 (Released:2020-08-31)
参考文献数
30

本研究の目的は, 加賀谷哲郎が我が国の特別支援教育の黎明期に「音楽療法」と呼んでいた, 障害者に対する音楽科の活動概念を明らかにすることである。その活動は, 小中学校学習指導要領 (平成29年告示) の「連続性・関連性」の概念と捉えられるからである。彼の活動の動機は, 小学校教員としてマイノリティ立場の子どもを指導した経験にあった。彼は中でも知的障害者に対する教育行政に問題意識を抱いていた。そのため, 子どもの「情緒の安定」に意義を見出した「音楽療法」を開発した。筆者は, 特別支援学校の学習指導要領が無かった時代に, 加賀谷が子どものどのような困難に教育ニーズを見出したのか, 彼の「療法」の概念を考察した。その結果, 彼は現行の特別支援学校学習指導要領の「自立活動」の目標と内容に相当する考え方を音楽科の学習に反映する必要性を訴えていた, と明らかにできた。