著者
尾崎 愛美
出版者
情報ネットワーク法学会
雑誌
情報ネットワーク・ローレビュー (ISSN:24352039)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.30-46, 2020

<p>近時、米国では、反差別運動の高まりを受けて、顔認証システムを犯罪捜査に提供することを停止する企業が散見される。また、サンフランシスコ・サマーヴィル・オークランド・ボストン・ポートランド等、顔認証技術に関する規制を設けた都市も見受けられる。</p><p>報道によれば、既にわが国の捜査機関でも顔認証システムの運用(さしあたり本稿ではこの種の捜査手法を「顔認証捜査」と称することとする。)が開始されているようである。この点、顔認証捜査の被侵害利益に関しては、プライバシーにとどまらず、公平性(フェアネス)や表現の自由といった観点からの検討も不可欠であると考えられる。本稿では、比較的早い段階から顔認証技術が社会にもたらす影響に関する研究が進められてきた米国の議論を参考に—わが国において顔認証技術の適正な利用を進めるにあたっても必要となると思われる—顔認証捜査に対する法的規制のあり方について考察を行った。</p>
著者
山本 龍彦 尾崎 愛美
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.96-107, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
7

現在の人類は,人工知能(Artificial Intelligence, AI)の技術革新に牽引される,第4次産業革命の時代を迎えていると言われている.わが国では,民間企業による採用場面や融資場面などの「適性」評価にAIが利用され始めており,刑事分野においても,AIを用いて犯罪の発生等を予測するシステムの導入が検討されている.米国では,一部の州や地域で,AIを用いた犯罪予測システムを用いた捜査が既に実施されているほか,刑事裁判における量刑判断にもAIが利用されている.その代表例が,COMPASという有罪確定者の再犯リスクを予測するプログラムである.しかし,このプログラムがどのようなアルゴリズムによって再犯予測を行っているのかは明らかにされておらず,このアルゴリズムにはバイアスが混入しているのではないかとの批判がなされている.このような状況下において,ウィスコンシン州最高裁は,COMPASの合憲性を肯定する判断を下した(State v. Loomis判決).本稿は,State v. Loomis判決を手がかりとして,AIを憲法適合的に“公正に”利用するための道筋について検討するものである.
著者
山本 龍彦 尾崎 愛美
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.96-107, 2018

<p> 現在の人類は,人工知能(Artificial Intelligence, AI)の技術革新に牽引される,第4次産業革命の時代を迎えていると言われている.わが国では,民間企業による採用場面や融資場面などの「適性」評価にAIが利用され始めており,刑事分野においても,AIを用いて犯罪の発生等を予測するシステムの導入が検討されている.米国では,一部の州や地域で,AIを用いた犯罪予測システムを用いた捜査が既に実施されているほか,刑事裁判における量刑判断にもAIが利用されている.その代表例が,COMPASという有罪確定者の再犯リスクを予測するプログラムである.しかし,このプログラムがどのようなアルゴリズムによって再犯予測を行っているのかは明らかにされておらず,このアルゴリズムにはバイアスが混入しているのではないかとの批判がなされている.このような状況下において,ウィスコンシン州最高裁は,COMPASの合憲性を肯定する判断を下した(State v. Loomis判決).本稿は,State v. Loomis判決を手がかりとして,AIを憲法適合的に"公正に"利用するための道筋について検討するものである.</p>
著者
尾崎 愛美
出版者
慶應義塾大学大学院法学研究科内『法学政治学論究』刊行会
雑誌
法学政治学論究 : 法律・政治・社会 (ISSN:0916278X)
巻号頁・発行日
no.111, pp.39-69, 2016

一 はじめに二 ビッグデータ時代におけるプライバシー侵害 (一) プライバシーを取り巻く状況の変化 (二) 従来の学説とプライバシーの社会的側面 (三) 新しい情報プライバシー権説三 情報プライバシー侵害の段階的分析 (一) 情報の収集段階 (二) データマイニング段階 : 目標設定からパターン発見まで (三) プロファイリング段階 1 データ解釈と評価 2 具体例 (1) 犯罪の発生する場所・時間帯の予測 (2) 個々の犯罪者・犯罪集団を対象とした予測 3 プロファイリングに関する国際的動向 (1) EU一般データ保護規則 (2) EU捜査等データ保護指令四 わが国における装着型GPS捜査 (一) 現行法上の対応 : 移動追跡装置運用要領 (二) 下級審裁判例の状況 (三) 装着型GPS捜査の段階的分類の必要性 1 尾行補助手段型のGPS捜査 2 情報集約型のGPS捜査 3 捜査終了後の犯罪予測を目的とした保有位置情報の利用五 おわりに