著者
土手内 靖 尾崎 牧子 西山 記子 長谷部 淳 谷松 智子 西山 政孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.60-65, 2015-01-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
7

Levofloxacin(LVFX)により激しい溶血性貧血を起こしたと推測される症例を経験したので報告する。症例は69歳男性。腹痛・発熱が1週間続くため近医を受診,腸間膜リンパ節炎と診断されLVFXが処方された。2日間内服したが症状の改善なく,当院に緊急入院となり,抗生剤をLVFXからCefmetazoleに切り替えた。入院3病日,嘔気,血圧低下,褐色尿および眼球黄染が出現,血液検査で著明な貧血(Hb 6.7 g/dL)と溶血所見を認めた。翌日にはHb 4.0 g/dLと貧血が進行し,直接抗グロブリン試験(direct anti globulin test:DAT),間接抗グロブリン試験(indirect anti globulin test:IAT)強陽性を呈したことより,自己免疫性溶血性貧血と診断された。その後赤血球濃厚液を4単位輸血,ステロイド剤を大量および漸減投与し,貧血は改善,自己抗体は急速に減弱し,IATは13病日に,DATは28病日に陰性化した。43病日に薬剤リンパ球刺激試験を施行したところ,LVFXに対し陽性であり,臨床経過と併せ,本例はLVFXによる薬剤性免疫性溶血性貧血(Drug-induced immune hemolytic anemia:DIIHA)と推測された。DIIHAは稀な疾患であるが抗生物質,降圧剤など身近な薬剤での報告があり,本例のように重症化することもあるため,注意が必要である。DAT陽性例に際しては患者の貧血,溶血の有無に留意し,薬剤が原因であることも念頭に置いた精査が重要である。