著者
尾﨑 牧子 西山 記子 二宮 早苗 土手内 靖 谷松 智子 西山 政孝 西﨑 隆 藤﨑 智明 横田 英介
雑誌
松山赤十字病院医学雑誌 (ISSN:03853888)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.67-73, 2010-12

症例は62歳、男性。交通事故に伴う膵損傷による後腹膜膿瘍により炎症が持続していた。2007年10月5日、Hb5.3g/dlの貧血に対して赤血球濃厚液2単位を輸血した。輸血開始20分後、多量の発汗と手背・足背に発赤を認めた。下顎呼吸となり、意識消失、呼吸が停止、脈は触知せず、心電図はPEA(無脈性電気活動)となった。直ちに輸血を中止し、心マッサージと気管内挿管、エピネフリン、塩酸ドパミン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム投与にて蘇生した。2日後、再度赤血球濃厚液2単位を輸血した。開始35分後、発赤・熱感が出現し、血圧低下と、頻脈を認めた。輸血後、総IgE量およびトリプターゼが上昇しており、アナフィラキシーショックと診断した。これら2本の赤血球濃厚液は、副作用を認めなかった過去の製剤とは異なるメーカーの血液バッグ、および白血球除去フィルターを使用しており、特に白血球除去フィルターの膜材質が異なっていたことから、この膜材質が原因と考えられたが、確定はできなかった。以後の赤血球輸血32単位は、すべてこの膜材質以外の製剤を洗浄して輸血し、副作用を認めなかった。(著者抄録)
著者
土手内 靖 尾崎 牧子 西山 記子 長谷部 淳 谷松 智子 西山 政孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.60-65, 2015-01-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
7

Levofloxacin(LVFX)により激しい溶血性貧血を起こしたと推測される症例を経験したので報告する。症例は69歳男性。腹痛・発熱が1週間続くため近医を受診,腸間膜リンパ節炎と診断されLVFXが処方された。2日間内服したが症状の改善なく,当院に緊急入院となり,抗生剤をLVFXからCefmetazoleに切り替えた。入院3病日,嘔気,血圧低下,褐色尿および眼球黄染が出現,血液検査で著明な貧血(Hb 6.7 g/dL)と溶血所見を認めた。翌日にはHb 4.0 g/dLと貧血が進行し,直接抗グロブリン試験(direct anti globulin test:DAT),間接抗グロブリン試験(indirect anti globulin test:IAT)強陽性を呈したことより,自己免疫性溶血性貧血と診断された。その後赤血球濃厚液を4単位輸血,ステロイド剤を大量および漸減投与し,貧血は改善,自己抗体は急速に減弱し,IATは13病日に,DATは28病日に陰性化した。43病日に薬剤リンパ球刺激試験を施行したところ,LVFXに対し陽性であり,臨床経過と併せ,本例はLVFXによる薬剤性免疫性溶血性貧血(Drug-induced immune hemolytic anemia:DIIHA)と推測された。DIIHAは稀な疾患であるが抗生物質,降圧剤など身近な薬剤での報告があり,本例のように重症化することもあるため,注意が必要である。DAT陽性例に際しては患者の貧血,溶血の有無に留意し,薬剤が原因であることも念頭に置いた精査が重要である。