- 著者
-
尾崎 貴士
- 出版者
- 大分大学
- 雑誌
- 若手研究
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
研究代表者が所属する研究室では、SLEモデルマウスと野生型マウスの脾臓および血液中に含まれる脂質メディエーターの濃度を、計159種類の脂質メディエーター関連物質を解析対象とした液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いて解析を行った結果、SLEモデルマウスではパルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)の濃度が野生型マウスに比べて血中及び脾臓内で低値であることをこれまでに明らかにした。そこで、SLEの病態形成機序に関わっているToll様受容体9(TLR9)刺激に対するPEAの作用を解析することとし、これまでの研究においてPEAは骨髄由来樹状細胞におけるTLR9刺激による炎症性サイトカイン(IL-6, IL-12, IL-23)の産生をmRNAレベルおよびタンパクレベルの両者で抑制することを見出した。また、同様に脾臓B細胞やマクロファージ細胞株(Raw 264.7細胞)においても、PEAはTLR9刺激によるIL-6の産生をmRNAレベル、タンパクレベルで抑制した。さらにPEAは、骨髄由来樹状細胞においてTLR9刺激による細胞表面マーカー(CD86、CD40、MHC ClassII)の発現を抑制し、同様にB細胞においてもCD86とCD40の発現をPEAは抑制することを見出した。また、本年の研究により、PEAはTLR9刺激によるマウス脾臓B細胞の増殖を抑制すること、さらにB細胞におけるTLR9刺激によるIgM抗体産生も抑制することを明らかにした。in vivo においても、TLR9刺激薬であるCpG-ODNとDガラクトサミンを用いたseptic shock modelマウスにおいて、PEAを投与することにより血中IL-6濃度の上昇が抑制されることをすでに見出しており、一連の研究結果から、SLEをはじめとするTLR9刺激よる炎症病態の制御にPEAが有用である可能性が示唆される。